妻に「5月は残業時間を減らして」と言われました。社会保険料を気にしているのだと思いますが、実際気にするべきでしょうか?
配信日: 2025.05.14

この記事では、影響する仕組みと具体的な影響額、そして賢い働き方について解説します。頑張って仕事をした残業が家計にとってマイナスにならないよう、しっかりと理解しておきましょう。

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目次
なぜ4~6月の給与が社会保険料を左右するのか
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、毎月の給与額に応じて決まるわけではありません。その年の9月から翌年8月までの1年間の保険料は原則として、前年の4月から6月の3ヶ月間の給与の平均額を基に算出される「標準報酬月額」によって決まります。
日本年金機構によると、この標準報酬月額は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32段階に区分されています。そのため、4月から6月の給与が変動すると、その後1年間の保険料に影響を与えることになるのです。
例えば、4~6月に残業が増え、一時的に給与が大幅に増加した場合、その平均額に基づいて決定される標準報酬月額が上昇します。標準報酬月額が上がると、毎月の給与から控除される社会保険料の金額も増えることになるため、注意が必要です。
稼ぎすぎると手取りが減る? 具体的なシミュレーション
標準報酬月額は、給与の月額に応じた等級区分が設けられています。そこで、標準報酬月額が30万円の人が、4~6月の残業によって平均給与が36万円になったと仮定してみましょう。これにより、標準報酬月額が3等級上昇する可能性があります。
全国健康保険協会の保険料額表(東京支部)に基づいた保険料とその差額は、表1の通りです。
表1
標準報酬月額 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 | 合計 | 差額 |
---|---|---|---|---|
40歳未満(介護保険料なし) | ||||
30万円 | 1万4865円 | 2万7450円 | 4万2315円 | 8463円 |
36万円 | 1万7838円 | 3万2940円 | 5万778円 | |
40歳以上(介護保険料含む) | ||||
30万円 | 1万7250円 | 2万7450円 | 4万4700円 | 8940円 |
36万円 | 2万700円 | 3万2940円 | 5万3640円 |
出典:全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」を基に筆者作成
40歳未満の場合、標準報酬月額30万円のときの健康保険料(1万4865円)と厚生年金保険料(2万7450円)の合計は4万2315円です。
一方、標準報酬月額が36万円になると、健康保険料(1万7838円)と厚生年金保険料(3万2940円)の合計が5万778円となり、月々8463円の負担増となります。この状態が1年間続くと、単純計算で約10万円以上の手取り額の減少につながる可能性があるのです。
実際の保険料率は、加入している健康保険組合の種類や、自身の年齢(40歳以上かどうかで介護保険料の有無が変わるなど)によって異なります。このように、一時的な収入増が、結果として年間の手取りを減らしてしまう可能性があることを理解しましょう。
「残業調整」は本当に有効? 賢い働き方を考える
4~6月の残業時間を意識的に調整することは、社会保険料の増加を抑える有効な手段の一つです。特に繁忙期による残業が見込まれる場合は、その後の手取り額への影響を考慮し、残業時間を調整することも検討する価値があるでしょう。
ただし、年間を通しての収入目標がある場合や、キャリアアップのために積極的に残業したいという考えがある場合は、必ずしも残業を減らすことが最善の選択とは限りません。自身の収入状況や働き方に対する考え方を総合的に考慮し、夫婦でしっかりと話し合うことが重要です。
手取りを増やすために知っておくべきこと
社会保険料だけでなく、所得税や住民税も、手取り額に影響を与える要素です。これらの税金は、年間の所得に基づいて計算されるため、4~6月の残業だけでなく、年間を通しての収入を把握しておいてください。
また、扶養控除や生命保険料控除など、所得控除を活用することで課税所得を減らし、手取り額を増やすこともできます。控除制度についても理解を深めておくといいでしょう。
4~6月の働きすぎは手取り減の可能性あり
4月から6月の給与額は、その後の1年間の社会保険料に影響を与え、働き方によっては手取りが減少してしまう可能性があります。自身の働き方や収入について見直し、夫婦でしっかりと話し合うことをおすすめします。
出典
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー