退職金は勤続年数で差がありますか? 「10年」「20年」「30年」で差があるのでしょうか?
配信日: 2025.05.13

会社員であれば、そんな疑問を持つ方は多いはずです。特に、転職を検討していたり、定年退職が近づいていたりする場合は、退職金が自分にどれくらい支払われるのかが気になるところです。
本記事では、「勤続10年」「20年」「30年」では退職金にどのような違いがあるのか、実際の調査データをもとに解説します。また、勤続年数だけでなく、退職金に影響する要素や確認方法についても触れていきます。

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目次
退職金の金額は勤続年数でどう変わる?
退職金は一般的に、勤続年数が長くなるほど増える傾向にあります。これは多くの企業が、「退職金=会社への貢献に対する報酬」として位置づけているためです。
参考までに、東京都の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」による、大卒で勤続年数別のモデル退職金支給額は以下のようになっています。
図表1
勤続年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 98万5000円 | 126万4000円 |
15年 | 190万3000円 | 237万3000円 |
20年 | 288万1000円 | 342万8000円 |
25年 | 434万2000円 | 510万円 |
30年 | 575万7000円 | 657万円 |
定年 | - | 974万1000円 |
東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」より筆者作成
つまり、5年ごとに100万円以上の差が生まれるのが一般的です。勤続年数が倍になると、退職金もおよそ倍近くになるケースが多く、定年まで勤めた場合の金額は非常に大きなものになります。
退職金を大きく増やせるタイミングとは?
退職金は、ただ年数が積み上がるだけでなく、あるタイミングを境に一気に増えるケースがあります。多くの企業では、「勤続20年」「勤続30年」などの節目に、支給係数が上がったり、役職や等級の評価が加味されたりするためです。
例えば、20年を超えると自己都合退職でも退職金が大きく増え、定年退職に近い水準の退職金が支給される場合もありますが、それでも完全に同等になるケースは少なく、企業によって差があります。
退職金はこのよう仕組みのため、「あと1年勤めるだけで数百万円増える」ということもあり得ます。転職や早期退職を検討する場合は、自分の会社の退職金規程を確認し、どのタイミングで辞めるかを慎重に見極めることが重要です。
勤続年数以外に影響する要素とは?
退職金の金額は、勤続年数以外にもさまざまな要素で決まります。以下のような点も影響を与えるため、注意が必要です。
1. 退職理由
定年退職や会社都合退職は、自己都合退職より退職金が多く支払われる傾向があります。
2. 役職・等級
同じ年数を勤めていても、課長・部長などの役職に就いている場合は、評価や基本給の違いにより退職金が大きく変わります。
3. 業種・企業規模
一般的に、大企業のほうが中小企業より退職金が高めです。
大企業の退職金平均は、厚生労働省中央労働委員会の「令和5年賃金事情等総合調査」によると、大卒の支給額は2139万6000円、中小企業は東京都の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると1149万5000円と大きな差があります。
また、業種による差も明確に存在します。「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、大卒の金融・保険業では1940万4000円と最も高い一方で、建設業では929万6000円と1000万円もの差があります。
4. 退職金制度の有無
そもそも、退職金制度がない企業もあります。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、企業全体の24.8%は退職金制度なしという結果も出ています。
将来のために退職金制度を確認しておこう
自分が今後どれくらいの退職金を受け取れるかを把握するには、会社の就業規則や退職金規程を確認することが大切です。総務部や人事部に相談すれば、詳細な説明を受けられる企業も多いでしょう。
また、転職を考えている方にとっては、退職金の有無や計算方法が将来の資産形成に直結する要素にもなります。企業によっては「企業型確定拠出年金(企業型DC)」や「中小企業退職金共済制度(中退共)」などを採用しているところもあるので、転職前には制度内容もチェックしておくと安心です。
長く勤めることで退職金は大きく増える。制度を確認して備えよう
退職金は、勤続年数が長いほど増えるのが基本です。「10年」「20年」「30年」の節目では、100万円以上の差が出ることも珍しくありません。さらに、退職理由や役職、企業の規模・制度、業種によっても金額は大きく変動します。
今の会社に長く勤めた場合、どれくらいの退職金が見込めるのかを知ることは、将来の資金計画において重要なヒントになります。退職金制度の有無や内容を早めに確認し、必要であれば資産形成と併せて準備を進めておくことをおすすめします。
出典
東京都 産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー