夫婦共働きですが、扶養の範囲で働くメリットって本当にあるのでしょうか?
配信日: 2025.05.07

今回は、社会保険の扶養の範囲で働くメリットとデメリットについて、詳しく解説します。

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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社会保険上の扶養とは
国民年金では、厚生年金に加入している世帯主(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は「第3号被保険者」となり、その間は保険料を負担することなく「保険料納付済期間」として将来受け取る年金額に反映されます(※1)。
また、健康保険では、被扶養者として保険料を負担することなく、病気やけがなどについて被保険者と同様の保険給付が行われます(※2)。
なお社会保険において、被扶養者と認められるためには、年間収入が130万円未満であることが条件となっています(※1, 2)。
社会保険の適用拡大とは
被扶養配偶者が扶養の範囲内となるよう、所得を130万円以下に抑えていても、配偶者本人が社会保険の適用を受けることがあります(※3)。
2024年10月から、従業員数が51人を超える事業所で、2ヶ月を超えて雇用され、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8万8000円(年収106万円)以上の方には、社会保険が適用(学生は除く)されるようになりました。
すなわち、社会保険が適用される事業所で働く方は年収106万円を超えると、被扶養配偶者ではなくなり、自分自身で社会保険料を納付しなければなりません。
扶養の範囲で働くメリットとデメリット
続いては、扶養の範囲で働くメリットとデメリットを整理してみましょう。扶養の範囲で働くデメリットは、「社会保険の適用を受けて働くメリットを受けられないこと」と考えることができます。
1. 扶養の範囲で働くメリット
(1)国民年金保険料を負担することなく、第3号被保険者となることができます。
(2)健康保険料を負担することなく、医療給付を受けることができます。
2. 社会保険の適用を受けて働くメリット(扶養の範囲で働くデメリット)
(1)厚生年金に加入することで、老齢年金が上乗せされます。
(2)障害等級1級と2級の障害には「障害厚生年金」が上乗せされ、障害等級3級やそれより軽い一定の障害にも、厚生年金から年金や一時金が支給されます。
(3)遺族年金において、遺族厚生年金が上乗せされます。
(4)病気休暇中に傷病手当金が支給され、育児休暇中には出産手当金が支給されます。
まとめ
共働き夫婦の片方がもう片方の扶養の範囲で働くと、社会保険料を支払わないで済むメリットがありますが、収入を低く抑える必要があります。
一方、社会保険の適用を受けて働くことで、収入を気にせず働くことができます。さらに厚生年金に加入することができるとともに、健康保険の被保険者となれることから、充実した年金や健康保険の給付を受けることができるようになります。
出典
(※1)日本年金機構 国民年金の第3号被保険者制度のご説明
(※2)全国健康保険協会 協会けんぽ 被扶養者とは?
(※3)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士