職場は土日も「新入社員研修」があるけど、新人から「代休はありますか?」と質問が! 自分の頃は休日の研修も“当たり前”でしたが、今の時代は問題になるのでしょうか? 割増賃金や代休の取り扱いも含め解説
配信日: 2025.05.02

研修についてどのような場合が労働時間にあたるのかは、厚生労働省のガイドラインで明確に示されています。会社独自の考えで間違った対応をしてはいけません。
本記事では、ガイドラインの内容なども紹介しながら、新入社員研修と割増賃金、代休などの正しい取り扱いを解説します。
目次
労働時間とは何かを、はっきり理解する必要がある
そもそも労働時間とは何か、まず確認しておきましょう。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)では次のように記載されています。
「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」
ポイントは「指揮命令下に置かれている時間」かどうかであり、一般にイメージされがちな「業務時間」「業務を行っている時間」よりも広い概念と考えておいたほうがよいでしょう。
研修時間の取り扱いはガイドラインで明記されている
「研修・教育訓練」等が労働時間に該当するか否かについて、厚生労働省は具体例も含めて解説しています。ガイドラインでは、次の3つのような時間は、労働時間として扱わなければならないと定められています。
●準備行為、後片付けなどの時間
●いわゆる手待ち時間
●参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
ガイドラインではさらに、労働時間に該当するかどうかは「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とされています。
客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれているかどうかは、「労働者の行為が使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断される」と記されています。
会社の就業規則でガイドラインと異なる独自の定めをすることは許されませんし、経営者や人事担当者、現場管理者などが、独自の基準で判断してはならないのです。
労働時間に該当する例・該当しない例
厚生労働省は、さらに「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」というパンフレットで、労働時間に該当する例、しない例について説明しています。
まず、「研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。」と原則が示されています。
さらに、「研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。」と補足されています。
労働時間に該当しない事例
●終業後の夜間勉強会。弁当は提供しているが参加は強制せず、不参加による不利益取り扱いもない。
●労働者が、会社設備の無償使用許可をとった上で、自ら申し出て、一人で、または先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
●会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
労働時間に該当する事例
●使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
●自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。
新入社員研修は明らかに業務にあたる
新入社員研修は、業務上参加が義務づけられています。任意参加とはとてもいえません。参加しなければ懲戒処分が課されるかもしれませんし、試用期間で解雇にすらなりかねません。参加が事実上強制されている以上、研修時間は労働時間にあたり、賃金の支払いが発生するのは明らかです。
この場合の労働時間は、単に講義に出席している時間に限りません。例えば、研修の場で課題が与えられ、業務時間外に個人やグループで取りまとめるといった時間も、使用者(会社)の指示によるので労働時間に該当します。前記の「労働時間に該当する事例」をもう一度確認してください。
中には、「研修・教育訓練の時間は、従業員自らの成長のためだから労働時間に当たらない」と考える人がいるかもしれません。しかし、これは厚生労働省のガイドラインから外れた独自の考え方にすぎません。
新入社員研修でも無理な時間外や休日の研修は避けたほうがよい
「鉄は熱いうちに打て」とばかりに、時間外や休日に及ぶ研修を安易にすべきではないでしょう。仮に時間外・休日研修を行うなら、それにふさわしい効果が得られるのかをきちんと吟味すべきです。そのうえで、時間外・休日・深夜の割増賃金や、休日勤務の場合の代休など、労働基準法に沿った取り扱いをすべきです。
出典
厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー