27歳の息子は、定時で帰宅して「映画」など観ています。私の頃は「24時間戦えますか?」と言われていたのですが、今は“ワークライフバランス”というのが重視されるのでしょうか?
配信日: 2024.09.14 更新日: 2024.10.10
中高年世代の人が働き始めた頃と今の若者の働き方は、驚くほど異なっています。バブル時代には、長時間労働が当たり前で、仕事に全力を注ぐことが求められていましたが、現代では“ワークライフバランス”という新しい価値観が広がっています。
本記事では、バブル時代の働き方と現在の働き方を比較・考察することに加え、その背景にある給与や物価など経済的な変化についてもあわせて解説します。過去と現在を振り返りながら、なぜ若者が「ほどほどに働く」ことを選ぶのか、その理由がきっと理解できるのではないでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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【24時間戦えますか?】ワークライフバランスとは
「黄色と黒は勇気のしるし、24時間戦えますか、ビジネスマ~ン、ビジネスマ~ン」。
昭和から平成へと変わる年に大流行したこのCMのフレーズは、ビジネスマンたちに対する強烈なメッセージでした。これは、困難な状況でも常に全力で仕事に取り組む姿勢が求められた時代の象徴です。当時の日本は、バブル経済の真っただ中で、企業も個人も経済的な成功を追い求めることが何よりも優先されていました。
しかし、現代では、働くことの意味や価値観が大きく変わっています。ワークライフバランスとは、「仕事と私生活の調和」を取ることを意味し、働き方改革の一環として広く認識されています。これは、仕事をすることだけが人生の全てではなく、プライベートの時間も同様に重要であるという考え方に基づいています。
現代のワークライフバランスは、ただ単に労働時間を短縮することだけではなく、働く人々が充実した人生を送れるようにすることを目的としています。例えば、定時で帰宅して家族と過ごす時間を確保したり、趣味や自己啓発の時間を持ったりすることが推奨されるようになっています。
バブル時代の給与・働き方とは?
1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日本はバブル経済の絶頂期を迎え、企業の業績は飛躍的に伸び、多くの人々が高収入を得ることができました。
この時代は「24時間戦えますか?」というキャッチコピーが象徴するように、仕事への過度なコミットメントが美徳とされ、長時間労働が当たり前でした。多くの企業では終身雇用制度が強固に存在し、昇進や給与の上昇が約束された中で、従業員は会社への忠誠を示すために長時間労働を厭(いと)わない風潮がありました。
この時期の平均年収は現在と比べても高く、1991年には約470万円に達していました。このような経済的背景が、豊かな消費文化を支え、多くの人々がぜいたくな生活を享受していました。
今の給与・働き方とは?
バブル崩壊後の経済成長の停滞などで落ち込んだ給与水準は、近年は回復傾向にあるものの、令和4年(2022年)の給与所得者の平均年収は約458万円と、バブル時代と比較して下回っています。
一方で物価は、1987年の消費者物価を100としたときに、2022年は120.5となり、35年間で物価は約2割上昇しています。結果、手取り収入が減少していることや、近年は物価が大きく上昇していることから、現代の若者はバブル時代のような豪華な生活を楽しむ余裕が少なくなっています。
このような経済状況の中で、現代の若者は「ほどほどに働き、穏やかに暮らす」というライフスタイルを選ぶことが多くなっています。仕事とプライベートのバランスを重視し、定時で帰宅して趣味や自己啓発に時間を費やすことが一般的となっています。
これには、長時間労働がもたらす健康問題への懸念や、家族や友人との時間を大切にする考え方が背景にあります。
まとめ
かつての「24時間戦えますか?」という時代と比べると、現代の働き方は大きく変わりました。ワークライフバランスが重視されるようになった背景には、少子高齢化や女性の社会進出、そして働く人々の健康の重要性などが挙げられます。これにより、仕事と私生活のバランスを取ることが求められる時代となりました。
バブル時代と現代の働き方や経済状況を比較すると、時代とともに働き方の価値観が大きく変化していることが分かります。高収入と長時間労働が美徳とされたバブル時代に対し、現代ではワークライフバランスが重視され、収入は控えめでも心身の健康や豊かな生活を追求する若者が増えています。
こうした背景から、現代の若者たちが「ほどほどに働き、穏やかに暮らす」ことを選ぶ理由が理解できるでしょう。時代の変化に応じて、自分らしい働き方を見つけ、生活を楽しむことがこれからますます大切になります。
「最近の若い人は、定時で帰宅して働くことに意欲的ではないのだろうか」と感じるかもしれませんが、最新の価値観を理解し、自身の価値観や考えをアップデートすることも必要でしょう。
出典
厚生労働省 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-図表1-8-2 平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
総務省 2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)7月分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー