更新日: 2024.08.26 その他家計

会社のルールで「残業代」は15分ごとの支給です。ただ毎日10分ほど「必須の残業」が発生するのですが、それでも残業代は“切り捨て”になりますか?

会社のルールで「残業代」は15分ごとの支給です。ただ毎日10分ほど「必須の残業」が発生するのですが、それでも残業代は“切り捨て”になりますか?
残業代は支払われるけれど、「15分未満の残業は切り捨てられる」という話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
 
15分以内の残業がたまに発生するくらいならまだ許容できるかもしれませんが、毎日必ず朝礼のために10分早く出社する、終業後の片付けに10分かかり退社が遅くなる、または上司が終業後に10分くらいかかる業務を常に指示してくるといった具合に、毎日のように10分程度の残業が必須の場合、「15分未満は切り捨て」のルールにのっとって残業代は支払われず、モヤモヤしてしまう人もいるでしょう。
 
それでも、「就業規則で決まっているから」と言われたら納得するしかないのでしょうか? 本記事では、就業規則で決まっていれば、15分以内の残業代をもらうことはできないのか、残業代の切り捨てが認められているのかについて紹介します。

残業代は1分単位で支払わないと違法

結論からいえば、労働基準法により、会社は残業代を1分単位で支払わなければなりません。したがって、「15分未満は切り捨て」というルールのもと、10分の残業なら残業代0、25分の残業なら15分の残業代支給といった具合に、15分未満を切り捨てて残業代を計算することは違法です。
 
なお、月の残業代を計算する際に、「30分未満を切り捨て(4時間25分の残業を4時間で計算)」することは許されていますが、反対に「30分以上1時間未満の部分は切り上げ(4時間35分の残業を5時間として計算)」なければなりません。
 
認められているのは「月の残業代を四捨五入」することのみであり、1日の残業時間は1分単位でカウントすることが求められます。
 

就業規則で決められている場合は?

法律では1分単位で計算しなければならないと確認しましたが、会社から「就業規則で決められている。雇用契約書にサインもしているよね?」と言われた場合はどうでしょう? 「就業規則に書いてあるなら諦めるしかない」と思うかもしれませんが、それは違います。
 
就業規則よりも優先されるのが法律です。「残業時間は1分単位で計算する、切り捨ててはならない」というルールを破る就業規則は無効とされています。
 
したがって、仮に15分以内の残業時間を切り捨てるという就業規則が存在しても、10分間の残業代をもらう権利があるのです。
 

1日10分の残業代が切り捨てられなければ残業代はいくらもらえた?

10分単位の残業が認められていたら、どれくらいの残業代がもらえたのでしょうか? 月給が25万円、1ヶ月あたりの所定労働時間が168時間、10分間の残業を月に21日間行ったというケースを例に、次のステップでシミュレーションしてみます。
 

1. 1時間あたりの賃金を求める 25万円÷168時間=約1488円
2. 月に21日間、10分間の残業をした場合の月間残業時間 10分×21日間=3.5時間
3. 残業代を計算する 約1488円×3.5時間×1.25倍(※)=約6510円
※週の労働時間が40時間を超える場合は25%の割増賃金となるため1.25倍

 
1ヶ月で約6510円、年間で約7万8120円の残業代が失われていたことになります。決して小さな金額ではないはずです。
 

就業規則は関係ない! 残業代は1分単位でもらおう!

残業代は1分単位で支払われることが基本で、15分以内は切り捨てるといった計算方法は違法です。仮に就業規則で定められていて、それに同意した過去があったとしても、法律に反する就業規則に効力はありません。会社の指示があって毎日10分間の残業をしているのであれば、残業代を請求すべきなのです。
 
未払いの賃金や残業代は3年までさかのぼって請求できます。しっかりと請求すれば、もしかしたら数十万円の未払い残業代を受け取れるかもしれません。
 
厚生労働省は、全国379ヶ所に総合労働相談コーナーを設置しています。会社に直接言いにくい人は、まずはこういった公的機関に相談してみても良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 大阪労働局 よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)
厚生労働省 神奈川労働局 川崎北労働基準監督署 割増賃金の計算方法
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集