更新日: 2024.08.07 働き方
現在育休中ですが、復職後も「保育園の送迎」などでフルタイム勤務は難しいです。会社から「時短勤務は難しい」と言われていますが、何か良い方法はないのでしょうか?
しかし実際の現場では、「業務の性質上、時短勤務が難しい」などとされ、時短勤務を認められなかったということもあるかもしれません。本記事では、育児短時間勤務制度を定める法律の内容、実際の適用の状況などを解説します。
目次
3歳未満の子を養育する従業員は所定労働時間が6時間に短縮される
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」の第23条で、3歳未満の子を養育する従業員が会社に申し出れば、会社は所定労働時間を6時間に短縮する措置を講じなければならないと定められています(育児短時間勤務制度)。
これはパート、アルバイト、契約社員、派遣社員などのいわゆる非正規労働者にも適用されます。もっとも、1日の所定労働時間が6時間以下の人や、日雇いで労働を行う人は対象外です。当然のことですが、育児休業中の人も対象ではありません。
また、入社1年未満の人や1週間の所定労働日数2日以下の人については、労使協定によって適用除外とすることができます。労使協定というのは、労働組合があれば労働組合、なければ労働者の代表と会社との間の協定です。
業務の事情などで短時間勤務が困難なら代替措置が設けられる
法律での定めがあるとはいえ、業務の性質や体制から「短時間勤務制度」の実施が困難な場合もあるでしょう。そのような場合には、次の施策で代替することが可能です。
・フレックスタイム制
・始業・就業時刻の繰上げ、繰下げ
・事業所内に保育施設を設置運営する等の便宜措置
「事業所内に保育施設を設置運営する」には、ベビーシッターを手配し、その費用を負担する、といった措置も含まれます。2025年4月1日からはテレワークの導入も選択肢に加えられます。
なお、短時間勤務制度の「実施が困難な業務」かどうかは、労使協定によって具体的に定める必要があります。会社が勝手に決めるものではありません。
短時間勤務制度は多くの会社で導入が進んでいる
厚生労働省の調査によると、短時間勤務制度の導入状況は図表1の通りです。法律で定められた期限・期間を超えて利用できるようにしている会社も、多数あることがわかります。
図表1 育児短時間勤務を導入している事業所の割合(%)
図表2 短時間勤務の利用可能期間(%)
厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」結果概要より筆者作成
不利益取り扱いは禁止されている
会社は、所定労働時間の短縮などを申し出たり取得したりしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。
これは育児休業、産後パパ育休、子の看護休暇、時間外労働の制限・深夜業の制限についての申し出、取得などについても同様です。
会社が「育児短時間勤務」に消極的ならこのように対応しよう
会社が「育児短時間勤務」について業務の性質上、難しいとするのであれば、次のように対応しましょう。
まずは当該業務が「労使協定」において「実施が困難な業務」として定められているかを確認してください。現場管理者などが「実施困難」と思い込んでいるだけという可能性もあります。労使協定もないのに、会社が勝手に実施困難業務と定めることは許されません。
次に、労使協定にて実施困難業務とされている業務に該当するなら、代替措置について相談してください。フレックスタイム、始業・終業時刻の変更、保育施設やベビーシッター派遣などです。前述したように、2025年4月からはテレワーク導入も選択肢になります。
その際には、現在すでに多くの企業で、育児短時間勤務制度が導入されており、法律で定められた期限・期間を超えて利用できるようにしている会社も多数ある、ということも補足して伝えてみてもいいかもしれません。
まとめ
会社に育児短時間勤務を断られた場合、まず労使協定などでどのように定められているかの事実確認をすることが必要です。担当業務が、本当に労使協定において「育児短時間勤務」ができない業務に該当しているなら、代替措置について会社としっかり交渉してみてください。
これは法律で定められた労働者の権利です。遠慮する必要はありません。このような相談をすることや、実際に措置を取得することについて、会社が不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
制度の内容を知って勇気を出して会社と相談することが、自身のみならず職場の仲間が短時間勤務制度を活用するきっかけにもなっていくでしょう。
出典
e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし(令和6年1月作成)
厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」結果概要
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー