更新日: 2024.05.26 働き方
転職先で「朝礼準備のため1時間前に出社して」と言われています。「新人なら当たり前」とのことですが、本当に早く出社するべきですか? 残業代は支払われるのでしょうか…?
最近では、昔に比べてコンプライアンスが強化されてパワハラやセクハラなどのハラスメントが問題視される傾向がありますが、「始業時間よりも早く来い」と要求されるのはパワハラなのでしょうか。
本記事では、上司から「1時間早く出社するのは当たり前」と言われたら従わなければならないのか、早出すると残業代は支給されるのか解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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早出の要求は断れるのか
結論からいえば、始業時間よりも早く出社するように求めること自体は直ちに違法となるわけではありません。業務の適正な範囲内であれば通常の労働指示とみなされる可能性が高いため、特別な事情もなく「朝早く出社するのは嫌だ」といった理由で断るのは現実問題として難しいと思われます。
定時を過ぎた後の残業も同様ですが、「繁忙期で業務量が多い」などの合理的な理由で、自発的あるいは上司から指示を受けて時間外労働をすることは珍しくありません。
ただし、あくまで一般的に「36協定」と呼ばれる協定を労使間で締結していたり、法定労働時間を超える場合は割増分を含む賃金を支給していたりすることが前提となります。
明確な必要性や根拠がない場合は問題となる可能性がある
しかし、たとえ業務の適正な範囲内であっても、個別には具体的な状況に鑑みてハラスメントに抵触すると判断される可能性もあります。
厚生労働省によると、パワハラは次の要件を全て満たすものと定義されています。
●優越的な関係を背景とした言動
●業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
●労働者の就業環境が害される
また、労働基準法第5条では「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」と強制労働の禁止が規定されています。
上司が部下などを暴行や脅迫、監禁するのはもちろん論外ですが、言葉の暴力で精神的に追い詰めたり、断りにくい雰囲気を作ったりすることも問題となる可能性があります。
従業員は基本的に雇用契約書や就業規則で規定されているルールにのっとり勤務します。そのため朝早く出社することに明確な理由や根拠がなければ応じる義務はないと考えられます。
しかし、実際は断りにくいケースも多いため、まずは上司(難しい場合は総務や人事担当者)に、新入社員が朝礼準備で朝早く出社するのは通常の労働にあたるのか確認することをおすすめします。
というのも「新人は早く出社すべき」というのは上司個人の考えや価値観であるケースもあるからです。会社として「新入社員の1時間前出社」は黙認しているのか、業務の適正な範囲内といえるのかなど確認してみましょう。
残業代の支給対象となる?
朝早く出社して朝礼準備を行うことが労働時間に含まれる場合、法定労働時間を超えると一般的な残業代に該当する割増賃金の支給対象となります。
例えば、所定労働時間が8時間で1時間早く出社すると合計9時間働く形となり、残業時間数に応じて25%以上を上乗せした手当を会社は従業員に支給する必要があります。
まとめ
本記事では、上司から朝早く出社するように求められた場合は断れるのか、実際に出社して働いたら残業代は支給されるのか解説しました。
基本的には始業時間から業務を行いますが、早出要求自体は違法ではありません。ただしお互いの誤解などによるトラブル防止のため、必要に応じて上司、総務や人事の担当者に早出の必要性や理由について聞いてみましょう。相談する前には念のため自身の雇用契約書や職場の就業規則を確認しておきましょう。
出典
厚生労働省 あかるい職場応援団 ハラスメント基本情報 ハラスメントの定義
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 しっかりマスター労働基準法-割増賃金編-
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー