更新日: 2024.05.21 働き方
職場で「有休を年に5回取得させるため」として、公休が減らされました。正直「違法では?」と思うのですが、実際どうなのでしょうか…?
年5日の有給休暇の取得義務化に対応する代わりに、企業が公休を減らすのは、違法ではないのでしょうか。本記事では、有給休暇取得義務の概要と、企業が公休を減らす対応に問題がないのかを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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有給休暇の5日取得義務とは
2019年4月以降、年に5日の有給休暇を労働者に取得させることが使用者の義務になりました。
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければいけないのが現在の法律です。
有休を取得する時季の指定は使用者が行える行為ではありますが、労働者の意見を聴取しなければいけません。使用者は、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるように配慮することも求められます。
有休を年5日取得させなかった企業には、対象となる従業員1人につき30万円以下の罰金が科されます。
有給休暇は労働者の好きなタイミングで取得できるのが原則
有給休暇取得は本来、労働者側が持っている権利ですが、企業によっては「閑散期にまとめて取得してほしい」といった理由で有休を取得する日を会社が指定するケースもあります。
しかし、労働基準法第39条5項では、「使用者は労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければならない」とされています。つまり、企業は労働者の許可なく勝手に有給休暇を使うことは本来できません。
年5日の有休取得義務化で公休が減るのは違法なのか?
2019年4月から年5日の有給休暇の取得が義務化されたのは、有給休暇の取得率を向上させ、従業員の心身のリフレッシュを図ることが目的です。就業規則に定められた公休に最低5日間の休みが増えることで、従業員がワークライフバランスを整えやすくなります。
ただ、実際には年5日の有給休暇が増えた代わり、公休自体が減ってしまうケースがあるようです。年5日の有給休暇を取得できても、年110日の公休が105日に減っては年間に休める日数は変わりません。
このような「骨抜き」は、制度の趣旨に反しており、厚生労働省も「法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日について、使用者が年次有給休暇として時季指定すること」は望ましくないとしています。
ただし、有給休暇を5日取得させていない場合と違い、このような「骨抜き」には罰則はありません。会社が就業規則を変更して、労働条件を変更することは可能です。
しかし、労働基準法第90条によれば、就業規則を変更する場合は、事業所の従業員の過半数が所属する「労働組合」、または従業員から選出された「過半数代表者」の意見を聞くことが定められています。
従業員の意見をまったく聞かないで就業規則を変更することは、不利益変更として無効になる可能性もあります。
まとめ
企業側は年次有給休暇について、従業員が希望する時季に取得させるのが原則です。有給休暇の年5日取得義務については企業側が時季を指定することはできますが、従業員の意見を尊重する必要があります。
ただ、企業によっては就業規則等で公休を減らして労働日にし、そこに有給休暇を指定するケースもあるようです。違法ではないとしても「従業員のワークライフバランスを整える」という制度の趣旨に反しています。
公休が減ったことについて従業員に意見の聞き取りがないのは不利益変更にあたる可能性もあります。疑問に感じたときはすぐに会社あるいは労働基準監督署に相談しましょう。
出典
厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 事業主の皆さまへ 年次有給休暇の時季指定を正しく取り扱いましょう
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー