更新日: 2024.05.18 働き方
転職先で「通勤は一番安い経路にして」と言われました。それだと「片道40分」かかり、本来の2倍の時間がかかってしまいます。通勤が大変なのですが、本当にその経路を使う必要がありますか…?
本記事では、公共交通機関で通勤する場合の通勤手当について解説します。
通勤手当とは
通勤手当とは、通勤に必要な費用を、会社が手当として負担するものです。多くの会社が、福利厚生の1つとして通勤手当を支給しています。
通勤手当の決まりは会社によって違う
通勤手当は、法律で強制される手当ではなく、会社が任意に出すものです。そのため通勤手当の支給の仕方は、会社によってさまざまです。
「自宅から就業場所までが2キロ未満の場合は支給しない」とする会社もあれば、特急料金の一部を手当として認める会社もあります。
多くの会社では、通勤手当は通勤にかかる実費相当額や定期券代を支払いますが、その定期券も、6ヶ月分ずつ購入させる会社もあれば、1ヶ月分ずつ支払うところもあります。そして通勤手当の上限を設定している会社は多く、その上限額もさまざまです。
通勤手当と社会保険料・所得税の関係
通勤手当には社会保険料がかかります。一方、所得税については非課税部分があり、公共交通機関で通勤する場合、1ヶ月あたり15万円までは課税されません。
そして、この非課税部分が適用されるのは「最も経済的かつ合理的な経路および方法による通勤手当や通勤定期券などの金額」とされています。また、新幹線や特急料金も、その要件に該当すれば、非課税部分が認められます。
早くて高いルートVS遅くて安いルート
都市部では、電車やバスを使う通勤ルートが複数あることが多く、その中から通勤ルートを選ぶことになります。
さて、通勤ルートが次の2つあるとします。どちらで通勤したいでしょうか? また、会社が認めてくれるのはどちらでしょうか?
ルート1 片道20分・片道300円
ルート2 片道40分・片道200円
支給は就業規則に従う
前記のとおり、通勤手当についての決まりは会社が任意に決められます。そのため、通勤手当として「早くて高いルート」が認められるかどうかは、会社の就業規則によるでしょう。
会社の通勤手当に関する規定が「最も経済的なルートを選択する」とされていれば、「ルート1」は認められない可能性が高いですし、「最も経済的かつ合理的なルート」であれば、「ルート1」が承認されることもあり得ます。
しかしこの判断は、実際は少々難しいものです。「最も経済的なルート」なら運賃を比較するだけで決まりますが、「経済的かつ合理的なルート」となると、答えが複数存在するからです。
「合理的」という言葉にタイムパフォーマンスが含まれるなら、「経済的」と「合理的」は両立が困難なケースが多いのです。そのためどの経路を承認するかは、結局は会社の判断に任せることになるでしょう。
合理性に欠けるときは会社に相談してみる
会社の規定が「経済的かつ合理的なルート」とされていて、会社が「安い方しか認めない」という場合は、どうしたらよいのでしょうか?
どうしても「ルート1」で通勤したい場合は、通勤時間の差などの理由を明示して、会社に相談してみる手もあります。通勤時間の差が非常に大きい場合は、そのことを考慮してもらえるかもしれません。また「小さい子どもを養育しているため、少しでも時間が欲しい」といった事情があれば、プラス材料になることもあるでしょう。
まとめ
通勤手当は、法律で支給が強制されているわけではないため、手当の有無や内容は会社によって異なります。複数の通勤ルートがある場合、会社の決まりによっては、最短ルートが認められるとは限りません。通勤手当についての詳細は、就業規則や賃金規程に記されているため、必要があれば確認しておくとよいでしょう。
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士