更新日: 2024.05.08 働き方
会社では「部長より出社が遅いのは失礼だから」と、部署のメンバーは1時間前に仕事を始めています。始業前でも「残業代」を請求できますか? 別に間に合えばいいと思ってしまいます…
しかし早めの出勤は受け入れるとしても、多くの人が気になるのが「給料は出るのかどうか」です。始業1時間前ほど極端でなかったとしても、始業時間にスムーズに仕事がスタートできるようにと、早めの出勤を促す会社もあります。
本記事では始業時間前に出勤して働くことが残業時間に該当するケースと、該当しないケースについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
70%以上の人が始業時間の15分以上前に出勤している
本事例のように、本来の始業時間より前に出勤することが暗黙の了解になっている会社や部署は存在します。中には「部長が始業1時間前に出勤しているから、一般社員のあなたはもっと早く出勤しなさい」と上司から指導を受けたことがあるという人もいるかもしれません。
また、昔から「始業時間にはすぐに仕事が始められるようにするべき」という価値観があり、早めに出勤して業務の準備をする人も少なくないはずです。働き方改革で残業に対する規制が厳しくなったことにより、自主的に早く出勤し仕事の遅れをカバーしている人もいるでしょう。
メディア事業などを行うベースメントアップス株式会社が2019年に実施した「仕事に関する意識調査」によると、出社時間は「始業の15分前」が35%と最も高く、「30分前」が27%、「1時間前」と答えた人も11%おり、全体の7割を超える人が始業時間より早く出勤していることがわかりました。一方で「始業時間ちょうど」という回答は27%にとどまっています。
始業前に仕事を始めると時間外労働にあたる可能性がある
それでは早めに出社して仕事をする場合、給料は支払われるのでしょうか。結論からいうと、始業時間前の労働に対しては、残業代が発生するケースと発生しないケースがあります。
そもそも労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、「使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間」のことをいいます。また業務外であっても、例えば出席必須の親睦会など参加が事実上強制されている場合も労働時間に含まれます。
なお「黙示の指示」とは、具体的な業務命令がなくても、労働者が仕事をしなければならない状況に置かれている、労働者がそのような環境にあることを管理者が黙認しているといった状態をいいます。
始業前の仕事で残業代が発生する例
労働基準法では1日の労働時間は「8時間まで」、1週間の労働時間は「40時間まで」と決まっています。この労働時間をオーバーする場合は、夕方以降の労働でも早朝の労働でも割増賃金の対象です。
始業前に仕事をして、以下のいずれかに該当する場合は残業代が発生する可能性があります。
上司の命令で始業前に出勤した場合
使用者である経営者や上司から「始業前に出勤して働きなさい」と明確な指示があった場合は「使用者の明示」にあたり、その時間は労働時間になります。
全員で参加する清掃の時間
上司や経営者から指示命令がなくても、暗黙の了解で始業前に出勤しなければいけない場合は、その時間も労働時間に含まれます。例えば「業務を始める前に社員全員で清掃する」といった場合、明確な指示がなくても黙示の指示を受けたと見なされます。
また、始業時間の前に全員参加の朝礼をするようなケースも同様です。
手待ち時間
作業はしていないものの、雇用主からの指示があればすぐに対応できる時間のことを「手待ち時間」と呼びます。手待ち時間は指揮命令下にあるため、労働時間と見なされます。
具体的には早朝に顧客が来るまでの待機時間、朝の時間帯以外にも、休憩時間などに電話番や来客対応をした場合は手待ち時間に該当するケースがあります。
始業前の仕事で残業代が発生しない例
始業時間より前に出勤しても、労働時間の対象にならないこともあります。例えば「通勤時間のピークより早く出勤して渋滞を回避したい」と考えて早く会社に着いた場合です。あくまでも自分の都合のみで早く出勤しているため「指揮命令」「黙示の指示」にはあたりません。
また労働時間内にできる仕事を「電話が鳴らない早朝に済ませてしまいたい」と考えて早く出勤したような場合も、自分の判断だけで早く出勤しているので、残業代の支払い対象には含まれません。
まとめ
始業時間前に出勤することが使用者の指示命令や、暗黙の了解で出勤せざるを得ない状況が理由である場合は、時間外労働として残業代を請求することが可能です。朝の残業で残業代が支払われるか不安な場合は、できるだけ早いうちに上司や総務に確認しましょう。
ただし、自分の都合のためだけに早く出勤した場合など、残業代の支給対象に含まれないケースもあります。
出典
ベースメントアップス株式会社 出社時間についての調査(PR TIMES)
厚生労働省 事務所と現場の稼働時間を見直してみませんか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー