更新日: 2024.05.06 働き方
扶養内のパートで働きます。交通費が片道800円ほどかかりますが、「103万円」や「130万円」の壁は交通費が含まれるのでしょうか?
そこで本記事では、扶養内で働くときの収入の壁に交通費は含めるのかどうかを、ケース別に解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
【103万円の壁】通勤手当には1ヶ月当たりの非課税枠が設けられている
交通費が時給とは別に「通勤手当」「交通費」などの名目で支給されている場合、国が定めた非課税限度額を超えない範囲であれば103万円の判定に影響せず、所得税は課税されません。交通費の非課税限度額は、図表1のように定められています。
【図表1】
(1)交通機関、有料道路を利用している | 合理的な経路・方法による運賃の額(最高限度15万円) |
(2)自動車や自転車で通勤している | 距離に応じて最高限度3万1600円 |
(3)通勤定期券を支給されている | 合理的な経路・方法による運賃の額(最高限度15万円) |
(4)1と2または3の併用 | 合理的な経路・方法による運賃の額と(2)の合計額(最高限度15万円) |
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」より筆者作成
交通機関を利用して片道800円の交通費がかかる場合、1ヶ月に20日出勤したとしても合計で3万2000円です。わざと遠回りをして出勤しているなど不合理と判断される事情がなければ、交通費を全額受け取っても非課税です。
ただし、交通費が別途支給されておらず時給に含まれている場合は、交通費も所得に含まれます。交通費として消費している金額も含めて103万円を超えれば所得税が課税される(扶養を外れる)ため注意しましょう。
【社会保険の扶養】130万円の壁の判定時は交通費を含む
社会保険の被扶養者資格の基準である、130万円の壁の判定時はどうでしょうか。
社会保険の被扶養者になるための収入の要件は、「年間収入が130万円未満かつ扶養者の2分の1未満である」ことです。判断の対象は所得ではなく年間収入であるため、通勤手当などの非課税の収入や手当もすべて含めて考える必要があります。
自分自身で社会保険料を負担しないでよい範囲で働きたい場合は、収入の調整をするときに、交通費を失念しないように注意しましょう。
【社会保険の扶養】106万円の壁の判定時には通勤手当を含まない
社会保険の扶養を外れたくない場合に意識する必要がある、もうひとつのボーダーラインが「106万円の壁」です。
106万円の壁とは、短時間労働者への社会保険適用拡大にともない、新たに設けられた基準のひとつの「所定内賃金が月額8万8000円以上」を指しています。判断基準となる「所定内賃金」とは、時給や日給を月額換算し諸手当を含めた金額です。
ただし、次のような賃金は所定内賃金には含みません。
●賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの
●結婚手当など臨時に支払われるもの
●時間外、休日、深夜の労働に対して支払われる割増賃金など
●通勤手当、家族手当など最低賃金法で算入しないと定められたもの
そのため、時給とは別に支給されている通勤手当に関しては、106万円の壁を考えるときに算入する必要はありません。
なお、106万円の壁が問題になるのは、勤務先や働き方が以下の条件に当てはまる場合です。それ以外の場合は従来の130万円の壁がボーダーラインとなることを覚えておきましょう。
●従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)
●週の所定労働時間が20時間以上
●雇用の見込みが2ヶ月を超える
●学生ではない
パートの交通費の取り扱いは「壁」の種類や支給方法で異なる
パートで働く人の交通費が、所得税や社会保険の扶養の判定に影響するかどうかは、壁の種類や交通費の支給方法で異なります。通勤手当などが時給とは別に支給されている場合、103万円の壁、106万円の壁の判定では除外されますが、130万円の壁の判定では収入額に含める必要があります。
また、時給に交通費が含まれている場合は、いずれの壁でもほかの収入と合わせてボーダーラインを超えるかどうかを判断しなければなりません。判定基準をよく理解して、うっかり扶養を外れてしまうことがないよう注意しましょう。
出典
国税庁 通勤手当の非課税限度額の引上げについて
全国健康保険協会 協会けんぽ 被扶養者とは?
厚生労働省 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま
日本年金機構 短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大が始まります
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー