更新日: 2024.04.29 働き方
繁忙期で「3~5月」は残業が増えてしまいました。「月4万円」ほどの差が出そうなのですが、9月からの手取りが減ってしまうのでしょうか…?
本記事では、社会保険料はどの時期に決まるのか、期間によって収入差がある時に社会保険料は変更されるのかを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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社会保険料はどのように計算されているの?
社会保険料は、まず入社した時の給与額をもとに計算されます。その後は毎年1回7月に勤務先が年金事務所へ「算定基礎届」を提出して保険料が決まります。これは「定時決定」と呼ばれています。新しく決まった保険料は9月から翌年8月までの1年間適用され、給与から天引きされます。
毎年の社会保険料計算に使う「標準報酬月額」の要件は、4月から6月までの期間に「支払われる給与金額(残業代含む)」「実際の出勤日数が月17日以上か」「諸手当(扶養手当・通勤手当など)」の3つです。給与が翌月支払制の場合は、3月から5月に働いて4月から6月に支払日がある給与金額が社会保険料の計算に使われます。
残業代はどうやって計算されているの?
残業代は、雇用形態にかかわらず時給で計算します。給与が月給制の場合は勤務先の就業規則で決められた年間勤務時間と勤務日数・休日数をもとに時給に換算して残業代を計算できます。例として、月給制で働いている人の時給と残業代がいくらになるのか試算します。
月給30万円(通勤手当などは含まず)で所定労働時間8時間(9時から18時)、勤務日数20日で働いているAさんの時給と残業代はいくらか
・月給から時給への計算式
月給30万円÷(所定労働時間8時間×月20日)=時給1875円
・18時以降に24時まで残業した場合の残業代の計算式
所定労働時間を超えた時の割増率は22時までは時給の1.25倍、22時以降は時給の1.5倍です。
18時から22時までの残業代:時給1875円×4時間×割増率1.25)=9375円
22時から24時までの残業代:時給1875円×2時間×割増率1.5)=5625円
9375円+5625円=残業代見込み額1万5000円
他の月と収入に差があるとき、社会保険料の計算に影響はあるの?
社会保険料は毎年の「定時決定」によって決められていますが、繁忙期と通常期を比較して給与額に差がある場合に、社会保険料は変わるのでしょうか。
社会保険料を変更できる「随時改定(月額変更)」制度があり、以下の3つの要件をすべて満たす場合のみに適用されます。
(1)固定的な賃金が、昇給や降給などで変動があった
(2)変動した月からの3ヶ月間に支給された報酬の平均月額とそれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差がある
「等級」とは標準報酬月額によって決められた区分を指しており、都道府県ごとに異なります。月給30万円で協会けんぽ加入の場合、令和6年度東京都での標準報酬月額は22等級(月収29万円以上31万円未満)で、2等級以上の差は、標準報酬月額24等級(月収33万円以上35万円未満)以上、または標準報酬月額20等級(月収25万円以上27万円未満)以下にあたります。
(3)変動した月からの3ヶ月間とも勤務日が月17日以上(短時間労働者は11日以上)である
上記の「固定的な賃金」とは基本給・家族手当・役職手当など一定の金額が継続して支払われるものをいいます。これに対して、残業代は勤務状況によって変わるため固定的賃金ではなく、随時改定の対象にはならないのです。よって、タイトルの「残業によって他の月と収入差が4万円」のケースでは社会保険料の変動はない見込みです。
まとめ
社会保険料の計算に使う標準報酬月額の要件は、4月から6月までの期間の「支払われる給与金額(残業代含む)」「実際の出勤日数が月17日以上か」「諸手当(扶養手当・通勤手当など)」の3つです。残業代は時給をもとに計算し割増されます。
社会保険料を変更できる「随時改定(月額変更)」制度は3つの要件をすべて満たす場合のみに適用され、勤務状況によって変わる残業代は基本的に改定対象にはなりません。
給与明細で、残業代が適切な金額か、社会保険料はいくらなのかを毎月確認することが望ましいでしょう。
出典
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
協会けんぽ 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー