上司に「俺が若いころは土日も仕事してた! 終わらないなら家でやってこい」と言われます。残業代は出ないようですが、これって「違法」ではありませんか? 残業代は本来どれくらい出るのでしょうか?
配信日: 2024.04.12
会社から理不尽なサービス残業を要求されたとしても、残業を行った際は時間に応じた残業代を受け取れるのが原則です。
本記事では、そもそも「休日労働」とは何を指すのかを解説し、残業をした際に支払われるべき残業代をシミュレーションします。
休日労働は35%以上の割増賃金
会社が労働者に休日労働をさせるときは、35%以上の割増賃金を支払わなければならないことが労働基準法に定められています。では、そもそも「休日労働」とは何を指すのかを見ていきましょう。
休日は「法定休日」と「所定休日」の2種類に大別されます。「法定休日」とは、労働基準法で定められている休日であり、会社は、週1日以上の休日あるいは4週間を通して4日以上の休日を労働者に与える必要があります。
「所定休日」とは、会社が法定休日以外に労働者に与える休日です。法律上、与える義務はありませんが、労働基準法では労働時間の上限を1日8時間、週に40時間と設定されているため、所定休日を1日設け、週休2日制とする企業が多いです。その場合、週休2日のうち1日を法定休日、もう1日を所定休日にしています。
労働基準法でいう休日労働とは、「法定休日」での労働を意味します。つまり、「法定休日」に労働した場合には休日労働の割増賃金が発生しますが、「所定休日」に働いた場合には休日労働の割増賃金は発生しません。
所定休日でも割増賃金が支払われるべきケース
前記の通り、労働基準法では「1日8時間、週40時間」の労働時間上限が定められています。そのため、この上限を超過した場合には、所定休日での労働であっても、残業代が支払われます。超過した残業時間については、25%以上の割増率によって賃金を支払うものと定められています。
割増率の考え方
完全週休2日制(土日休み)で、1日の所定労働時間が8時間である企業を例に、土日の労働の割増率を考えてみます。なお、1時間当たりの賃金は2000円と仮定します。
平日は所定労働時間の8時間ずつ働き、土曜日に5時間、日曜日に5時間働いたとします。
本ケースでは、平日の合計労働時間は40時間(8時間×5日)であるため、土曜日に勤務した5時間分は全て残業(時間外労働)とみなされ、割増賃金(25%以上)を受け取れます。土曜日の労働に対する残業代計算式は以下の通りです。
2000円(1時間当たりの賃金)×5時間(残業時間)×割増率(125%)=1万2500円
また、日曜日の勤務に関しては「残業」ではなく「休日労働」に該当するため、勤務した5時間分については割増賃金(35%以上)を受け取れます。日曜日の労働に対する残業代計算式は以下の通りです。
2000円(1時間当たりの賃金)×5時間(残業時間)×割増率(135%)=1万3500円
以上から、土日の労働に対する残業代は、1万2500円+1万3500円=2万6000円です。
残業代の時効消滅について
残業代は時効消滅期間が設定されており、2020年3月までの支払い分は「2年間」、2020年4月以降の支払い分は「3年間」が時効消滅期間となっています。
会社に相談しても残業代未払い解消のめどが立たない場合は、労働組合や労働基準監督署、弁護士などへの相談を検討してみてください。法的な対抗手段をとることがはばかられるのであれば、転職活動を始めてみるなど、自分の身を置く環境を変えてみるのも良いかもしれません。
まとめ
サービス残業が常態化し、土日にも労働を強いられている人は、支給されるはずだった残業代をぜひ計算してみてください。自身の利益を守るためにも、残業代の計算方法について、ある程度の知識を持っておきましょう。
また、すでに心身の調子を崩してしまっている場合は、可能な限り早く病院で受診してください。自身の健康を第1に考えて行動しましょう。
出典
厚生労働省 労働基準に関する法制度
e-Gov 法令検索 労働基準法
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート