更新日: 2024.03.28 働き方

4~6月は「働き過ぎ」に要注意!? 社会保険料が「月1万7000円」高くなる場合もあるの? 仕組みを解説

4~6月は「働き過ぎ」に要注意!? 社会保険料が「月1万7000円」高くなる場合もあるの? 仕組みを解説
4月から年度の切り替わりという会社も多く、人によっては気分一新と張り切って働いた結果、残業代を多くもらうことがあるでしょう。しかし、4月~6月に残業代をもらいすぎると、1年間高い社会保険料を支払わなければならなくなるため、注意が必要です。
 
本記事では、どれくらい社会保険料が高くなるのか、また、社会保険料の仕組みについて解説します。

4月~6月に残業代として合計30万円稼いだ場合

介護保険料を支払う40歳以上で、月収の額面額が30万円の人が、4月~6月の残業で月10万円、合計で30万円稼いだとします。すると、月々の社会保険料が約1万7000円増加してしまいます。
 

社会保険料の仕組み

4月~6月に残業代を稼ぎすぎると、なぜ社会保険料が増加するのかについて説明します。
 
社会保険料は所得税などとは違い、「標準報酬月額」を算定して、1年間の保険料を決定する仕組みになっています。
 

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、4月・5月・6月に受けた報酬の平均額を出し、その平均額に応じて等級に当てはめて導き出すものです。
 
具体例で説明します。先ほどの例と同じく、月収30万円で、4月~6月の残業でさらに月10万円で計30万円稼いだとすると、平均額は40万円になります。
(月収30万円+残業代30万円÷3ヶ月=40万円)
 
厚生年金保険料の場合、平均した給与が39万5000円~42万5000円のレンジにある人の標準報酬月額は41万円、等級は24になります。
 

社会保険料の決まり方

導き出した等級に応じて1年間支払う社会保険料が決定します。等級24の場合、自身が支払う厚生年金保険料は月3万7515円になります。社会保険料は4月~6月の給与を基に算定され、同年の9月から反映されます。
 
社会保険料の注意点は、4月~6月の給与だけで1年間の社会保険料が決定され、途中の変更は基本的に無いことです。
 
そのため、4月~6月に多くの残業をして残業代を稼ぎすぎた場合、その後1年間高くなった社会保険料を支払う必要があります。
 

社会保険料が変わる場合

社会保険料が変わるタイミングは、決まった時期の変更と、特定の状況が生じた場合の随時の変更の2種類に分かれます。それぞれの変更について解説していきます。
 

決まった時期の変更

社会保険料は毎年9月に、同年の4月~6月の給与に合わせて変更になります。ここで少々複雑な事態が生じるのですが、9月分の社会保険料を9月の給与から徴収する職場もあれば、1ヶ月遅れで10月の給与から徴収する職場もあります。
 
どちらになるかは職場ごとに異なるため、9月の社会保険料が変わっていなかったから、10月の社会保険料を確認するようにしましょう。
 

随時の変更

昇給もしくは降給によって固定賃金に大幅な変更が生じたときは、そのタイミングで社会保険料が変更になります。随時の変更には、次の3つの条件を満たしている必要があります。

(1)昇給または降給などにより固定的賃金に変動があった。
(2)変動月からの3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(3)3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

(1)は前提として満たしており、正社員として週5で働いていれば(3)は満たせるはずなので、(2)の条件が焦点になります。
 
昇給または降給により数万円単位で給与が変わった場合は、社会保険料が変更になる可能性があります。
 
社会保険料が変更になるのは、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4ヶ月目です。例えば10月に支払われる給与に変動があった場合は、1月分から社会保険料が変更になります。
 

まとめ

社会保険料は4月~6月の給料の平均で今後1年間の金額が決定されてしまうため、この時期の残業のしすぎに注意しましょう。
 
社会保険料は9月~翌年8月までは基本的に変わりません。昇給または降給で一定の額以上の給与の変動があれば、年の途中でも社会保険料は変わりますが、あくまで固定賃金部分の変更が対象です。7月~翌年3月に残業代がたくさん発生するだけでは、社会保険料は変わらないことに注意が必要です。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料
協会けんぽ 標準報酬月額の決め方
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
協会けんぽ 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)
厚生労働省 雇用保険料率について
 
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士

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