更新日: 2024.01.29 働き方

スーパーで働いていますが、週1で「店員の態度が悪い」「それが客への態度か」と長時間クレームをつけてくる人がいます。店長は「一応お客様だから…」と言うだけです。警察に相談するのは大げさですか?

スーパーで働いていますが、週1で「店員の態度が悪い」「それが客への態度か」と長時間クレームをつけてくる人がいます。店長は「一応お客様だから…」と言うだけです。警察に相談するのは大げさですか?
顧客であっても、不当な要求や理不尽な言動は「カスタマーハラスメント」に該当します。状況次第では警察との相談もためらうべきではありません。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、企業内でどう取り組むべきか、また顧客に対しどのようにカスハラ禁止を訴えていくか、といった対策も示されています。
 
本記事では、カスタマーハラスメント対策の具体的かつ実践的な内容をまとめました。

カスタマーハラスメントとは何か

カスタマーハラスメント(以下カスハラ)とは、顧客から受けたクレームや要求のうち、要求の内容が不当、または顧客の要求を実現するための手段・態様が不相当なものを指します。
 
不当な要求の典型例は、「商品サービスに問題がないのに交換を要求する」などです。手段・態様が不相当というのは、暴言、土下座の要求、長時間の居座りなど様々な類型があり、暴力行為など犯罪に該当するものもあり得ます。
 

カスハラへの対応方法

カスハラ対応については、厚生労働省がわかりやすいマニュアルなどを公開しています。大事なポイントは次のとおりです。
 

カスハラの判断基準を明確にしておく

現場で判断に迷わないように、企業内でどのような場合がカスハラにあたるかを明確にしておくことが重要です。
 
「要求内容が妥当かどうか」については、事実関係を確認し、根拠のある要求かどうかを見極めます。例えば商品の交換・返品要求も、品物に問題があれば当然応じるべきですが、問題がない場合は不当な要求として断るべきです。
 
「要求を実現するための手段・態様が妥当かどうか」については、具体的・客観的な基準を社内で明確にしておくべきです。例えば「長時間の居座り」というだけでは不明確です。居座りが30分以上に及ぶ場合は不当な居座りとして扱う、などの基準を定めておきましょう。
 
暴力行為やセクハラなどは論外です。ただちにカスハラと判断すべきです。
 

カスハラを想定した事前準備を整える

経営トップがカスハラは許さないという方針を明確にし、従業員にも顧客にも、周知することが大切です。図表1のように厚生労働省がカスハラ防止用のポスターを作成しているので、ダウンロードして店内に掲出するのもいいでしょう。カスハラ発生時の相談対応窓口や対応方法なども明確にしておきます。
 
図表1

厚生労働省 カスタマーハラスメント対策ポスター
 

初期対応で、カスハラに発展するのを防ぐ

顧客からクレームを受けた初期の段階での対応もポイントです。複数の担当者で冷静に対応する、まずは顧客の言い分をしっかり聞く、情報を管理者や相談窓口に速やかに伝える、その場しのぎの返答や対応はしないなど、できる限りカスハラに発展させないようにすることが大切です。
 

カスハラが起こったときには毅然と対応する

初期の対応にも気を配ったものの、それでもカスハラへと発展してしまったときには、厚生労働省のマニュアルで紹介されている、カスハラの様態別の対応方法が参考になります。いくつか紹介します。
 

時間拘束型(顧客が従業員を長時間にわたり拘束、居座り、電話をし続ける)

顧客の要望には応じられないことを明確に告げ、一定時間(例えば30分)を超えたら毅然と退去を求める、あるいは電話を切る。顧客が退去しない場合は弁護士や警察への通報も検討する。
 

リピート型(理不尽な要求を繰り返し求める)

対応できない旨をはっきり伝え、今後同様の問い合わせを止めるよう伝える。状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報を検討する。
 

暴言型(怒鳴り声、馬鹿などの侮辱的発言、人格否定、名誉棄損の発言)

周囲の迷惑となるため、やめるよう伝える。必要に応じて録音し、程度がひどければ退去を求める。
 

暴力型、威嚇・脅迫型(殴る、蹴る、「殺されたいのか」など)

警備員らと連携を取りながら、複数名で対応し、ただちに警察に通報する。
 

店舗外拘束型(クレームの詳細がわからないまま、顧客の自宅や喫茶店に呼びつける)

店外で対応する場合は公共性の高い場所を指定する。従業員を拘束して帰さない、といった場合は弁護士への相談や警察への通報を検討する。
 

セクハラ型(身体接触、つきまとい、執拗なデートの誘い、性的冗談)

録音・録画などの証拠を集め、加害者に警告、施設への出入りを禁ずる。繰り返す場合、弁護士への相談や警察への通報を検討する。
 

SNS/インターネット上での誹謗中傷型(名誉棄損、プライバシー侵害の情報を掲載)

掲載先ホームページなどの運営者に削除を求める。投稿者への損害賠償などの請求や、名誉棄損などの処罰を望む場合は、弁護士や警察と相談する。
 

会社には従業員の就業環境を守る義務がある

カスハラは従業員の心身に大きなダメージを与える深刻な問題です。会社は従業員の就業環境を守り、安全に配慮する義務があります。必要に応じて弁護士や警察など外部機関に相談・通報することも会社の義務の一つです。
 
自身がカスハラ被害者で、もし直属の上司が対応にあいまいな姿勢をとるなら、躊躇(ちゅうちょ)せず本部に相談しましょう。その際には、厚生労働省のマニュアルなどを活用して説明することをお勧めします。
 

出典

厚生労働省 あかるい職場応援団 カスタマーハラスメントを知っていますか?
厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
厚生労働省 カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!
厚生労働省 カスタマーハラスメント対策ポスターを追加作成しました!
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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