更新日: 2024.01.21 働き方
「県庁職員」と「市役所職員」年収が高いのはどっち? 意外に大きな差はないの? 仕事内容や転勤時の「引っ越し」の有無についても解説
そこで本記事では、市役所職員と県庁職員の年収に加え、仕事の内容や転勤に伴う引っ越しの有無などそれぞれの違いについて解説します。
市役所職員と県庁職員の平均年収
まず気になるのは、平均年収の違いかと思います。管轄するエリアが広い県庁職員の方が市役所職員よりも給与が高いイメージがありますが、結論から言えば、両者に大きな差はありません。
総務省の「令和4年 地方公務員給与の実態」の調査結果によれば、図表1のとおり一般行政職の平均給与月額は都道府県庁職員が41万1612円、市役所職員は39万4875円と大きな差はなく、人口50万人以上の市が該当する「指定都市(全国で20市)」に至っては43万1588円と市の方が高くなっています。
図表1
※「平均給与月額」とは、平均給料月額と諸手当月額を合計したものであり、「平均給与月額(国比較ベース)」とは、比較のため国の公表資料と同じベース(=時間外勤務手当を除いたもの)で算出したもの。
総務省 令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要
この平均給与月額に年間150万円ほどの夏冬ボーナスを加えると、県庁職員も市役所職員も年収の平均は600万円台となります。少なくとも図表1の1番下にある国家公務員と地方公務員とでは平均給与月額に5万円近い差があることに比べれば、市役所と県庁では地域差はありますが、給与に大きな差はないと考えてよさそうです。
仕事の内容の違いや転勤はある?
市役所も県庁も行政の組織であり、行政施策の企画・立案や毎年度の予算編成、実際の業務に関する事務処理など、事業を執行していく過程や取組分野などには大きな差はありません。しかし、業務内容を見れば役割や特徴には違いがあるうえ、職員の転勤についても大きな違いがあるため注意が必要です。
市役所業務の特徴
市役所は、地域住民に対する窓口業務が多くなるため、住民との距離は県庁に比べるとかなり近くなります。具体的な業務内容は以下のとおりです。
●住民登録、戸籍関連の事務
●地方税にかかる事務
●医療、介護、福祉、年金の手続
●保育園の入所、小中学校等の運営
●保健、水道事業、ごみの収集や処理等
ほかにも、道路や都市計画なども挙げられますが、市単位の事業は県や国に比べると規模は小さくなりがちです。
県庁業務の特徴
県庁は、市区町村の区域を越える事務や、国と市町村、市町村間の連絡・調整役を担っています。具体的な業務内容は以下のようなものがあります。
●国と市町村の橋渡しや調整、とりまとめ役
●広域にわたる事務や市町村に関する連絡調整
●農地や都市計画、道路、河川、海岸等の建設と整備
●高等学校等の運営
●農林水産業、商工業等の産業振興
県庁の場合は、県全体を見ながら国や市役所とも連携・調整をして業務を進める潤滑油的な役割があるのが特徴です。
転勤に伴う引っ越しの有無
市役所と県庁において、業務内容以外で違いが生じる可能性があるのは、転勤時に「引っ越し」を伴うかどうかです。市役所の場合、民間企業や他の自治体に派遣されるような場合には市外が勤務先になることがありますが、原則勤務地は「市内」のため、引っ越しの必要がありません。
一方、県庁の場合は県土の広さなどにもよりますが、異動範囲が「県下全域」であるため引っ越しが必要な場合もあります。
もちろん、転勤で引っ越しが必要な場合、費用は手当として支給されますが、例えば子どもがいる家庭では、転校させたくないなどといった理由から単身赴任を選択する人も珍しくありません。また離島に出先機関があるような県では離島勤務になることもありますので、このような違いを認識して就職先を検討しましょう。
自分は市役所と県庁、どちらの地方公務員に向いている?
市役所と県庁は年収に大きな差はないため、業務内容や転勤時の引っ越しの有無などを判断材料にしましょう。
業務内容で考えれば、住民に接する機会が多く、住民と近い距離感で仕事をしたい人には市役所がおすすめです。一方で、自治体間の調整役や広域的な仕事に従事したい人で、引っ越しも気にならない人には県庁の方が向いているかもしれません。
まとめ
年収が高いレベルで安定している公務員ですが、とくに地元や地域で働きたい人には市役所・県庁といった地方公務員は魅力的です。市役所と県庁では、年収には大きな差はありませんが、業務内容や転勤時の引っ越しの有無などに違いもありますので、特徴を十分に理解したうえで、就職・転職先として検討を進めてみてはいかがでしょうか。
出典
総務省 令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要
厚生労働省 jobtag 地方公務員(行政事務)
執筆者:松尾知真
FP2級