更新日: 2024.01.03 働き方

3年前に辞めた会社がブラック企業で、今思えばほとんど「残業代」をもらっていません。今から申し出ればもらえますか?

3年前に辞めた会社がブラック企業で、今思えばほとんど「残業代」をもらっていません。今から申し出ればもらえますか?
「残業をしたのに、正当な分の残業代を受け取れなかった」というトラブルは意外と多くありがちです。なかには、以前働いていた会社がブラック企業で、残業代をほとんどもらえなかったというケースもあるでしょう。しかし、残業代請求には、3年間の時効が認められています。時効を迎えてさえいなければ、退職後でも請求は可能です。
 
本記事では、残業代請求の時効についてと、請求を行う際に用意しておきたい残業代未払いの証拠などについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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残業手当は所定労働時間を超えた分に対する割増賃金

残業手当とは、決められた労働時間を超えた分に対して支払われる賃金です。残業とは、雇用契約や就業規則などで定められた始業時間から終業時間(休憩時間を除く)以外の労働を意味します。また残業は、以下の2種類に分類されており、それぞれに違いがあることを正しく認識しておくとよいでしょう。

●法定内残業:1日につき8時間、または1週間につき40時間(労働基準法で定められている法定労働時間)の範囲内で行われた残業
●法定外残業:1日につき8時間、または1週間につき40時間(労働基準法で定められている法定労働時間)を超過して行われた残業

雇用契約や就業規則などで定められた労働時間が9時から17時で、残業時間が18時までだった場合は法定労働時間の8時間の範囲内での残業となります。1時間の法定内残業を行ったことになり、所定の割増賃金の受け取りが可能です。なお、法定内残業に対する割増賃金は一律ではなく、就業規則などで定められています。
 
残業時間が19時までになると、法定内残業が1時間、法定外残業は1時間となるため、割増賃金(所定の賃金に一定の割合を乗じた金額)が支払われます。
 

原則として1分単位での勤怠管理が義務付けられている

残業手当は、10分や15分から発生するといったことはありません。労働基準法第24条(賃金の支払)でも「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められているからです。勤怠管理は原則として、実際の出勤時間から1分単位で行われています。
 
勤務先が残業時間を1分単位で管理していない場合は、労働基準法違反となって第120条1項により、30万円以下の罰金の対象になります。
 

残業代請求の時効は3年間と定められている

すでに退職している会社がブラック企業で、当時は残業代をもらえなかったとしても、残業代請求には時効が認められています。なお、残業代請求の時効は、労働基準法第115条(時効)によって、賃金請求権の消滅時効期間を5年(旧法は2年)に延長しつつ、当分の間はその期間を3年とされています。
 
残業代をもらっていないようであれば、速やかに不足分を請求しましょう。3年が経過したものから順次時効となるため、請求を行うならば、早いに越したことはありません。時効を迎えてしまったら、いかなる理由があっても、請求は認められない点に注意してください。
 

退職後でも請求が可能

残業代の請求は、時効を迎えていなければ、退職後でも行えます。ただし、企業が未払いの残業代があることを認めない場合や、労働審判や訴訟に発展する可能性も高いようです。そこで、請求手続きをスムーズに進めるためにも、以下の残業代未払いの証拠を事前にそろえておきましょう。

●タイムカード
●勤怠記録
●パソコンのログイン履歴
●残業時間を証明できる業務上のメール
●業務日誌
●通勤のために使用した交通ICカードやデータ

日記やメモは後から記載が可能なため、証拠としては不十分かもしれません。また一つではなく、複数用意できたほうが、証拠としての確実性を高めるためには有効です。
 
未払いの残業代を正しく計算して、証拠を集めたら、会社との交渉を進めてください。しかし、会社が、個人からの残業代の請求に応じないケースも有り得ます。請求に応じてもらうには、弁護士などの専門家に交渉を依頼したほうが、有利に話を進められるでしょう。
 

時効になる前に未払いの残業代を請求しよう

「すでに退職した会社がブラック企業で残業代をもらえなかった」という場合でも、時効を迎えていなければ請求は行えます。その際に、退職済みかどうかは問われません。どれくらいの未払いがあるのかを確認して、残業代を証明できる有効な証拠を用意したうえで、手続きを進めましょう。
 
ただし、会社が残業代の請求に応じない可能性も高いので、確実に受け取りたいのであれば、弁護士などの労務問題の専門家に相談して、対応を依頼したほうがスムーズでしょう。
 

出典

厚生労働省
事業主の皆さま、労働者の皆さま 未払賃金が請求できる期間などが延長されています

しっかり学ぼう!働くときの基礎知識 時間外・休日労働と割増賃金
デジタル庁 e-Gov法令検索 労働基準法 第24条、第115条(時効)、第120条1項
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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