更新日: 2023.12.04 働き方

夫が運送業です。2024年から「働き方改革関連法」が施行されるらしいけど、残業代は減るのでしょうか?

夫が運送業です。2024年から「働き方改革関連法」が施行されるらしいけど、残業代は減るのでしょうか?
2024年4月から「働き方改革関連法」が施行されます。この施行により、時間外労働の上限規制が「自動車運転の業務」に適用されます。ご主人が運送業にお勤めの方は、残業代が減ってしまうのではないかと心配になるかもしれません。
 
本記事では、2024年4月に施行される働き方改革関連法が、運送業にお勤めの方の残業代に、どう影響するのかについて解説します。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

時間外労働の上限規制が1年960時間となる

労働基準法では、原則として、労働時間を1日8時間・1週40時間以内と規定しています。これを「法定労働時間」といいます。また、同法では、原則として、休日を毎週少なくとも1回与えることと規定しています。これを「法定休日」といいます。
 
法定労働時間を超えて労働(時間外労働)をさせる場合や法定休日に労働をさせる場合、使用者(会社)と労働組合(従業員)の間で、「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などについて規定した労使協定を結び、所轄の労働基準監督署長へ届け出なければなりません。この労使協定のことを「36(サブロク)協定」といいます。
 
36協定で定める時間外労働については、厚生労働大臣の告示によって上限の基準が規定されており、その基準は、原則として、1ヶ月45時間・1年360時間です。
 
ただし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別な事情が予想される場合には、特別条項付きの36協定を締結することで、上記限度時間を超えて時間外労働を行わせることができます(原則である1ヶ月45時間を超えることができるのは、年間6ヶ月まで)。
 
このように、これまで時間外労働(残業時間)の上限は、厚生労働大臣の告示(行政指導)によってのみ制限され、法律による制限がありませんでした。
 
そこで、「働き方改革関連法」に「時間外労働の上限規制」を設け、2019年4月から順次施行することとなりました。自動車運転の業務については、5年の適用猶予があり、2024年4月からこの上限規制が適用されます。
 
2024年4月以降、自動車運転の業務における時間外労働(残業時間)の上限は、図表1のように規定されます。
 
図表1
 

原則 •1ヶ月:45時間
•1年:360時間
臨時的な特別の事情があって、
労使が合意した場合
(年間6ヶ月までの規制はなし)
•1ヶ月:規制なし
•1年:960時間

 
※ 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」を基に筆者作成
 

2023年4月に引き上げられた割増率

残業代は、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて行われた労働(時間外労働)に対して支払われる賃金です。時間外労働をさせる場合、会社は従業員に対し、割増賃金を支払わなければなりません。
 
「働き方改革関連法」は、2023年4月にも施行されており、このとき、時間外労働(月60時間超)における割増賃金の割増率が「25%以上」から「50%以上」に引き上げられました(中小企業の場合)。現在の割増率は、大企業・中小企業に差はなく、図表2のとおりです。
 
図表2
 

法定時間外労働の種類 割増率
時間外労働(月60時間以下) 25%以上
時間外労働(月60時間超) 50%以上
深夜労働 25%以上
休日労働 35%以上

 
※ 厚生労働省 「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」を基に筆者作成
 
例えば、時間外労働(月60時間以下)に対する賃金は、通常1時間当たりの賃金1000円、割増率25%であれば、通常賃金1000に割増賃金250円を加算した1250円となります。
 
また、法定時間外労働の種類が重複した場合、割増率を合算して計算することがあります。例えば、時間外労働(月60時間以下)と深夜労働が重複した場合、割増率は50%(=25%+25%)以上となります。
 
休日労働と深夜労働が重複した場合は、割増率は60%(=35%+25%)以上となります。なお、休日労働には「時間内労働」「時間外労働」の区別がないため、「休日労働と時間外労働が重複する」という考え方はありません。
 

まとめ

2024年4月から「働き方改革関連法」が施行され、自動車運転の業務に対し、時間外労働の上限規制が適用されます。その内容は、原則として、1ヶ月45時間・1年360時間です。例外として、臨時的な特別の事情があって、労使が合意した場合、1年960時間以内の時間外労働が認められます。
 
「残業代が減る」のは、この規制により残業時間が減る方です。言い換えれば、これまで残業時間が年間960時間以内の方は、影響がありません。
 
2023年4月の「働き方改革関連法」の施行により、時間外労働に対する割増賃金の割増率が引き上げられました。これにより、割増率における大企業・中小企業の差はなくなり、残業代が増えた方もいらっしゃるかもしれません。
 
「働き方改革関連法」の目的の1つに、「働き過ぎを防ぐことで、働く方々の健康を守る」というものがあります。この目的のために、「長時間労働の是正」つまり「時間外労働の上限規制」があります。この機会に、ワーク・ライフ・バランスを見直してみるのも良いかもしれません。
 

出典

厚生労働省 「働き方改革 ~一億総活躍社会の実現に向けて~」

厚生労働省 「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

厚生労働省 「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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