更新日: 2020.04.07 その他家計

【相談実例】夫婦二人で奨学金の返済・・家計が回りません 奨学金との付き合い方

執筆者 : 塚越菜々子

【相談実例】夫婦二人で奨学金の返済・・家計が回りません 奨学金との付き合い方
「『あんたはそんなこと考えなくていいから勉強しなさい!』そう言われたからです」
 
そんな答えが返ってきました。夫婦二人で奨学金を返済しているものの、家計がとても回らない。そんなお悩みを持ってご相談にいらっしゃいました。
 
2.7人に一人の割合で借りられている奨学金。今回は奨学金制度の是非ではなく、奨学金とどう付き合うかについて考えてみたいと思います。
 
塚越菜々子

執筆者:塚越菜々子(つかごし ななこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com

夫婦二人で600万円の奨学金残債が家計を圧迫

まだお若い30歳前後のご夫婦でした。子供の教育費が心配、貯蓄ができないとのご相談でしたので、収入と支出の大まかな部分を伺ったところ、奨学金の返済がご夫婦二人ともありました。
ご主人はひと月に約2万円。奥様はひと月に2.3万円。世帯で年間50万円以上の返済です。
 
それに対して収入はどうかというと、ご主人は会社員ですがお若いこともあってか手取り22万円ほど。派遣社員として働いている奥様は手取り13万円前後(どちらも社会保険加入)とのことでした。
 
それにプラスして住宅ローンがあり、お住まいの土地柄車が2台。うち一台はローンがありました。水道光熱費も冬は高くなります。ひと月に4.3万円の返済は負担となっていました。
住宅ローン・自動車ローン・奨学金の3つの借入返済が、収入の4割を占めてしまっていたのです。
 

育った家も裕福ではなかった

派遣で働いている仕事と、大学を卒業後の仕事、大学の学部について話が出たときに、ご相談者様はおっしゃいました。「私の実家も姉と兄がいて、それほど裕福ではなかったので、私は就職するつもりでいました。その話を親にしたときに『あんたはそんなこと考えなくていいから勉強しなさい!』と言われたんです。
 
だから大学受験をしたのですが、合格おめでとうの言葉より先に奨学金の手続きをするように言われてびっくりした覚えがあります」
 
子ども側からみて、親の経済状態というのは分かりにくいもの。また、親側としても子供に財布の心配をされるのはあまり喜ばしいことではないとは思います。
 
ですが、ご相談者様は「こんなに返すんだったら大学なんて行かなかったのに」と思っているとのことです。親子の認識違いが、結果として負担をかけてしまっているのです。
 

わが子の奨学金をどうするか

そんなご相談者様は、自分たちが奨学金で苦労しているからこそ、自分の子供には奨学金は絶対に借りさせたくない。そう思っていらっしゃいました。ただ、現状ではすでに加入している学資保険と、何とか取り置いてある児童手当だけで精一杯です。
 
自動車ローンが一番早く終わりますが、車が2台必要な現状、次の車が必要になるまでに貯金ができなければ、またローンを借りることになります。それを防ぐためにまずは、使途不明金になっているクレジットカード払いや、使っていないオプションがついている通信費の見直しなどを行っていただくことにしました。
 
そして、それと同時に「教育費の上限」を決めていただきました。子どもに奨学金を背負わせたくないと思うあまり、教育にいくらでもお金をかけてしまうと、今度は自分たちの老後の自立がままなりません。
 
老後に子供に迷惑をかけてはどちらにしても本末転倒です。「奨学金を絶対に借りさせない」と決めつけるのもまた、負の連鎖を作りかねないのです。
 

時間をかけて清算していく

幸いにもご相談者様ご自身もお若く、お子様もまだ小さかったので、まとまったお金を用意しなければいけない大学進学までは時間があります。必須ではない習い事をしない、ご自身の収入が増えるような働き方を検討する、自動車は必要最低限にとどめてキャッシュで買えるようにしていく。そして何より、お子様が大きくなったら、早めに進路と学費について話し合うことをお勧めしました。
 
学資保険と児童手当を確実に準備することで、ご相談者様のように大学費用全額を奨学金にする必要はなくなるはずです。あらかじめ親が親自身の老後の自立を妨げない範囲で出せる教育費を伝えておくことで、子供自身も進路を選択するときの一つの基準となるでしょう。
 
奨学金の制度自体が悪なわけではありません。すべての学費を出せない親が悪いわけでもありません。親子ともに「なんとなく」お金を使うことをやめ、何のためにいくらお金を使うことができるのか話し合いの機会を持つことで、よりよいお金の使い方ができるのではないでしょうか。
 
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者

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