スウェーデンは大学が無料!? 本当の「異次元の少子化対策」とは? 世界の対策を紹介
配信日: 2023.11.04
児童手当の支給期間を高校卒業まで延長、所得制限の撤廃、第3子以降には月3万円を支給など、子育て世代にはうれしい思い切った対策といえるのではないでしょうか。
ただ、世界に目を向けてみると考え方が変わるかもしれません。本記事では、世界の少子化対策を紹介します。
執筆者:八木友之()
日本の合計特殊出生率と諸外国との比較
厚生労働省の発表によると、2022年の合計特殊出生率は「1.26」となっています。これは7年連続で前年を下回り続けたうえ、過去最低数値を記録したかたちです。日本の少子化の進行が深刻な問題であることが分かります。
次に諸外国の合計特殊出生率を見てみましょう。図表1は諸外国の合計特殊出生率の推移です。日本は2022年より高い2019年の数値となっていますが、それでもアメリカやヨーロッパ各国と比較すると低い数値であることが分かります。韓国に至っては1.0を切っており、日本よりも少子化が深刻なようです。
図表1
厚生労働省 諸外国の合計特殊出生率の推移
スウェーデンの少子化対策
少子化対策に成功した国といえばスウェーデンが有名です。合計特殊出生率は、1999年に最低の1.5を記録したあと2010年には1.98まで回復させています。その後は下落傾向となり、2018年には1.76、2020年には1.66となっていますが、日本と比べると非常に高い数値であることに変わりはありません。
スウェーデンの少子化対策として、子ども1人につき480日の育児休業や育児休業中の所得補償制度の充実など、子どもを産んでも働き続けられる環境が整備されている点が挙げられます。
育児休業中には働いていたときの賃金の80%が給付されるため、安心して子どもを産んで仕事を休むことができるのでしょう。また、男性も育児休業を取りやすい体制が整っており、2005年時点で約80%が育児休業を取得しているようです。
またスウェーデンは公立大学も私立大学も学費がかかりません。日本では子どもを持つか、もう1人産むかなどを判断する際、将来の教育費が大きな足かせとなる人が多いでしょう。そこがないというのは大きいですね。
フランスの少子化対策
フランスの2020年合計特殊出生率は1.83となっており、欧州連合の中で最も高い数値となっています。1994年には過去最低の1.66を記録しましたが、その後2010年には2.02まで回復し、2020年まで高い数値で推移しています。
フランスは他の欧州諸国より非常にきめ細かい子育て支援政策が行われています。例えば特徴的なのは義務教育が3歳から始まる点です。
また、子どもにかかる教育費は大学まで無料です。2018~2019年度の学士課程では登録料として184ユーロ(2023年10月31日時点における為替レートで約3万円)や保険料を負担するだけで、高等教育を受けられる仕組みとなっています。
まとめ
本記事ではスウェーデンとフランスの少子化対策を簡単に解説しました。日本政府が進めている少子化対策を見てみると、児童手当の拡充や高等教育費用の無償化など諸外国を参考にしていることが分かります。安心して「子どもを産んで育てよう」と思える社会になるよう、思い切った政策が行われることを願います。
出典
厚生労働省 令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況
厚生労働省 諸外国の合計特殊出生率の推移
内閣府 平成29年版少子化社会対策白書第1部少子化対策の現状(第1章 5)
内閣府 平成17年版少子化社会白書 第4章海外の少子化対策
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士