更新日: 2023.10.28 その他家計

温暖化で上がった「冷房費」と下がった「暖房費」の差はどちらが大きい? 光熱費を比較!

温暖化で上がった「冷房費」と下がった「暖房費」の差はどちらが大きい? 光熱費を比較!
2023年、温暖化の影響もあり、日本の夏は記録的な猛暑となりました。一日中エアコンを使わざるをえず、電気代の明細書を見てびっくりされた方も多かったのではないでしょうか。しかし、地球が温暖化しているのであれば冬場は暖かくなっているはずです。もしかしたら、夏場に増えた分よりも冬場の光熱費は下がっているのかもしれません。
 
本記事では、エアコンを使用した場合に限定し、温暖化で上がった冷房費と下がった暖房費との比較をしてみたいと思います。季節ごとの光熱費対策を考えるのではなく、年間を通しての光熱費対策を考えてみるきっかけになれば幸いです。

40年前の光熱費消費との比較

まず、東京都を対象に、エアコンが一般家庭に普及し始めた40年前の気温との違いから光熱費消費について考えてみましょう(図表1、図表2)。
 
図表1
 
図1
 
国土交通省気象庁 東京(東京都)日平均気温の月平均値(℃)より筆者作成(※誤差を少なくするために、5年間の平均値を用いています。)
 
図表2
 
図2
 
国土交通省気象庁 東京(東京都)日最低気温の月平均値(℃)より筆者作成(※誤差を少なくするために、5年間の平均値を用いています。)
 

熱帯夜と真夏日・猛暑日の増加がもたらす影響

直近5年間の8月の最低気温が24.7度ということは、多くの日が熱帯夜です。2023年8月は29日が熱帯夜でした。日本生気象学会によると、湿度によっては気温が25度程度であっても熱中症になる可能性があるため、就寝中にも冷房をかける必要があるとされています。
 
気象庁が発表したデータによると、2023年の熱帯夜の年間日数は57日と過去最高記録を更新しました。40年前は20~40日ほどでしたので、25日程度夜に冷房を使う日が増加したことになります。
 
25日×6時間(18時~24時)=150時間
 
また、日中の気温が30度を超える真夏日・猛暑日も熱中症になるリスクが高まりますので、冷房を使用する必要があります。2023年の真夏日・猛暑日が過去最高の90日となり、40年前と比べると40日前後増えています。
 
40日×7時間(11時~18時)=280時間
 
つまり、温暖化によって冷房を使用する時間が合計で430時間ほど増えた計算になります。
 

冬場でも日中は寒くない日が増加

2022年度の冬に最低気温が10度以下になったのは134日で、40年前と比べてもあまり変化はありませんでした。しかし、最高気温が10度未満の日は24日にすぎず、40年前と比べると20日ほど減っています。
 
マンションや断熱対策が施されている住宅は、外気と室温との差が10度くらいありますので、10度を上回れば室内は20度ほどになる場合もあります。朝は暖房が必要でも日中は暖房を使用しなくてもよい日が増えたということになります。
 
20日×9時間(9時~18時)=180時間
 
つまり、温暖化によって暖房を使用する時間が180時間ほど減った計算になります。
 

生活スタイル別の検証

気温のほか、生活スタイルによっても電気代は異なります。仕事や学校などで日中に人がほとんどいない家と、日中も人がいる家とでは消費電力に差が生まれます。具体的に検証してみましょう。
 

冷房より暖房のほうが消費電力が多い

冷房使用時に奨励されている室温は28度ですので、外気が37度であった場合は9度の差となります。一方で、暖房使用時に奨励されている室温は20度ですので、外気が2度の場合は18度の差となります。そのため、エアコンの暖房が作動する場合、冷房より大きい気温差をなくすために激しく電力を消費します。
 
経済産業省資源エネルギー庁の省エネ性能カタログ電子版を見てみると、各社製品の消費電力は冷房より暖房のほうがわずかに多い(1.1倍以下)程度ですが、期間消費電力量は暖房のほうが冷房より約2.5倍となっています。動作環境などにも差があるため、単純に比較はできませんが、暖房はそれだけ多くの電力を消費するのは間違いありません。
 

日中はほとんど外出している家の場合

暖房を使用する頻度が下がったのは、冬場の日中に限定されていました。従って、日中はほとんど外出している家の場合は、冬場の暖房を使う時間にはそこまで違いが生じず、熱帯夜が増えた分だけ光熱費が上がっていると考えられます。
 

日中もあまり外出しない家の場合

日中も家の中で過ごしている場合、真夏日・猛暑日が増えた430時間分冷房を使う時間が増えましたが、一方で冬場の日中が暖かくなったことにより、180時間分暖房を使う時間が減りました。
 
期間消費電力量を参考に冷房より暖房のほうが2.5倍消費電力が多いとした場合、冬場の増加分は冷房の450時間分(180時間×2.5倍の消費電力)に相当するとも考えられます。
 
つまり、冷房換算で20時間分(450時間分-430時間分)相当だけ、下がった暖房費のほうが多く、光熱費が下がったと予想できます。
 

年間の光熱費を抑えるには

検証の結果、冬場の日中になるべく暖房を使わない対策を行うことで、夏場に使った分よりも多くの光熱費を冬場で削減できる可能性があるということが分かりました。そもそも、夏の太陽は位置が高いために、直接日光が入ってくるような造りの家以外では、住環境の改善などでは大きな効果は期待できません。
 
一方で、冬場の室温を上げるには、断熱材を活用したリフォームや二重窓の取り付けなど数多くの方法が存在しています。光熱費が気になるのであれば、冬場の暖房費を削減する対策を行ってみてはいかがでしょうか。
 

出典

国土交通省気象庁 東京(東京都)日平均気温の月平均値(℃)

国土交通省気象庁 東京(東京都)日最低気温の月平均値(℃)

 
執筆者:老田宗夫
キャリアコンサルタント

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