更新日: 2023.10.21 働き方
コンビニ店長です。今月忙しくかなり残業しましたが、「管理職だから残業代はつかない」と言われました。諦めてタダ働きするしかないでしょうか?
本記事では、コンビニエンスストアの店長として働いて残業をした場合、残業代はつかず「タダ働き」として泣き寝入りするしかないのか解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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残業代がつかない管理職とは?
一般的に「管理職=残業代がつかない役職」とイメージされることも多いですが、実際どのようなケースに当てはまると残業代が発生しないのでしょうか。
結論からいえば、労働基準法の「管理監督者」に当てはまると残業代は発生しません。一方で管理監督者に当てはまらなければ、一般的な労働者と同様に時間外労働を行うと残業代が発生します。
ここで明確にしなければならないのは「管理監督者とは何なのか」です。というのも実際は労働基準法上の管理監督者ではないにもかかわらず、同様に扱われて残業代が支給されない「名ばかり管理職」の存在が問題となることが多いからです。
厚生労働省によると、管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。職場で管理職に昇格したからといって自動的に管理監督者に当てはまるわけではありません。
加えて一般的な労働時間や休日等の規定にとらわれずに活動することが求められる重要な職務であり、職務遂行のために必要な権限や責任を有し、それに見合った賃金などの待遇が用意されているかどうかを総合的に判断する必要があります。
管理監督者をめぐる裁判では多くが否定されているものの、なかには肯定された事例も存在します。例えば、2008年に証券会社の元支店長が時間外割増賃金などを請求した「日本ファースト証券事件」は、当時は30名以上の部下を統括する地位にあり支店経営方針の策定や部下を指導監督する権限などを有するだけでなく、昇格や降格などの人事考課にも相当の影響力があったと判断されました。
今回はコンビニエンスストアの店長ですが、単に店長というだけでは管理監督者に当てはまらない可能性が高いでしょう。同様の事例として2008年に起こった「日本マクドナルド事件」がありますが、ファーストフード・チェーンの店長も営業時間や商品の種類、仕入先など本社方針に従わなければならないことも多く、経営方針に大きく関与しているとは言い難いとして否定されています。
名ばかり管理職は残業代を請求できる
名ばかり管理職は管理監督者ではないため、通常通り残業代を請求することができます。会社側が認めずに残業代が支給されない場合は、まずは自身が正当に残業を行ったことがわかる次のような証拠を集めることをおすすめします。
・メールやチャットの連絡履歴
・タイムカードのコピー
・パソコンのログインやログアウトを行った時間の画像
本当はパソコンのアクセスログなどのデータも用意したいところですが、難しければ前述の証拠だけでも用意してください。客観的な証拠を集めることが困難な場合でも日記やメモなどで状況を記録しておきましょう。
証拠を集めながら会社と交渉します。まずは直属の上司に相談することをおすすめしますが、それがかなわない場合は人事や総務などの担当部署に掛け合ってみましょう。
残業代の支給をめぐる問題は感情論になってしまうおそれもあります。冷静な判断を行うためにも、法テラスなどの窓口を通して弁護士に相談しても良いかもしれません。
まとめ
本記事では、コンビニエンスストアの店長が残業した場合「管理職だから残業代はつかない」と主張する会社側の判断は問題ないのか解説しました。
名ばかり管理職扱いされると、本来発生するべき報酬が当事者に支払われず、長時間労働が横行して心身の健康が損なわれるおそれがあります。深刻な事態に陥る前に、いきなり会社に直談判するのが難しい場合は法テラスなどで相談してみましょう。
出典
日本労働組合総連合会 Q&A 労働基準法の「管理監督者」とは?
厚生労働省 労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
厚生労働省 労基法41条2号の管理監督者の該当性
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー