更新日: 2024.10.07 貯金
【相談事例】 貯蓄しているはずが、「気づいたらない」の繰り返しです 貯まらない人の「無駄」のありかとは
今回は「ここが無駄だと思うんだけどなかなか減らせなくて」という支出が、実はそれは無駄遣いではないかもしれないという事例をご紹介いたします。
Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com
目次
貯まっていくはずが「気づいたらない」の繰り返し
ご相談に来られたのは40代前半、共働きで小学生のお子様が二人いるYさん。夫の給与から基本的な引き落としの支出が出ていき、自分の給与から日々の食費や日用品の代金を現金やカードで支払っているとのことでした。
夫の口座は各種引き落としが終わるとそれほど残高は残らない。自分の口座は普段は残っていくのに、ちょっと支出が多い月だったり、夫の口座から年払いのものが落ちたりしたときに足りなくなり移動するなどして、結局「気づいたら貯金がない」ことの繰り返しだったそうです。
そもそも「手取り」があやふや
Yさんは家計簿をつけたことがないということでしたので、まずはお二人の収入の手取りを伺ってみました。ご主人様が手取りで26万円、奥様が21万円ほどとのことです。
そこでまず少し引っ掛かりを感じました。地方ではなく首都圏のそれなりの人口が多いエリアにお勤めで、お二人とも40代。勤続年数やざっくりとした年収から、仮にボーナスの比率が高いとしても、そこまで月の手取りが少なくなるとは思えませんでした。
「社会保険や税金以外にひかれているものはありませんか」とお伺いしたところ、「私はないけれど夫は何か引かれていると思います」とのことです。
給与明細については紙で渡されるのではなくweb明細とのことで、ご主人本人もYさんもよく見ていなかったそうです。
すぐ思いつく支出と金額をあげてみる
給与明細をお持ちではなく、給与から差し引かれているものがどの程度の何なのかはわからないため、とりあえず銀行に振り込まれている金額を「収入」とみなして、次はそこからの支出をお伺いしました。
まずは、金額が大きい支出から大まかに教えていただきます。一番大きい支出は住宅関連費用。これは多くの方がそうではないかと思います。そのほかは突出して多いというものがないとのことですので、通信費・水道光熱費・教育費・お小遣いなどわかる範囲でお伺いしました。聞いている限りはどれも常識的な支出の額です。
通信費は改善の余地があったり、お小遣いのあいまいな部分は再定義していったりする必要性は感じましたが、ハッキリと「これは無駄ですね」と言えるほどではありません。
「外食・通信教材・保険」が無駄遣いと感じているけれど
お悩みを伺った時点で、外食が多い・通信教材を辞めたほうがいいと思っている・保険が高すぎるのではないか、とのことでしたので、いよいよその金額についてお伺いしました。
まず外食に関しては、基本的に週末に家族で出かけたときの一食と、たまに平日にもしてしまうということです。とはいえ食費と合わせてもひと月に7万円程度。驚くほど無駄があるというより「外食は無駄だ」というイメージが先行しているようです。
保険に関しては5万円強の支払いがありましたが、終身保険や学資保険を含んでいるので一概に無駄といえるかは難しいところです。貯蓄の一部と考えると見方が変わって来そうですね。
通信教材に至っては、お子様お二人分を合わせても6000円程度。全く使っていないということでしたら確かに「無駄」ではあるかもしれませんが、金額としてはそれほど大きなものではありません。
本当の無駄は「使途不明金」の中にある
Yさんが「無駄」と感じているところを含めて大まかに支出を聞き、それを合計してみましたが、その時点で何に使っているかわからない支出が少なく見ても「8万円」ほどありました。もちろん毎月ピッタリの支出になるわけではありませんから、ある程度のばらつきは出てくるはずですが、それでも8万円の使途不明金は多すぎます。
Yさんの場合は、まず口座に振り込まれてくる手取りの「前」に不明なお金があります。そして、ご本人が無駄だと思っているところ以外に「8万円」の不明なお金があります。本当の無駄はそこにあるかもしれません。
自分が金額まで含めてハッキリと認識している「無駄」は、本当は大事にしたい支出の場合もあります。記憶に残らないくらい無意識に支出している部分の方がよっぽど無駄を含んでいるかもしれません。
安易に気になっているところを無理に減らすことから始めずに、まずは全体を明らかにしてから、本当の「無駄」を探してみてはいかがでしょうか。
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者