更新日: 2023.09.29 働き方

自宅をオフィスに、ひとりで起業! 必要な手続きと注意点を解説

自宅をオフィスに、ひとりで起業! 必要な手続きと注意点を解説
働き方が多様化する昨今、起業を考える方もいらっしゃるでしょう。自宅をオフィスとしてひとりで起業をする際の、必要な手続きを解説するとともに、注意点も併せてアドバイスします。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

自宅で起業しやすい環境が到来

副業が解禁になり、自分の趣味や特技を生かして副収入を得ている人も多くなりました。コロナで生活様式が大きく変わったことで、在宅勤務という働き方も定着した今、自宅という場所は大きな意味を持つようになりました。
 
自宅をオフィスにすれば、賃貸物件を探すこともなく必要な資金も少なくて済みます。通勤の時間や費用もかかりません。
 
打ち合わせもオンラインミーティングのアプリなどでOK、手軽に使えるコワーキングスペースも増えたので、業種にもよりますが、事務所を持つことにこだわることもないかもしれません。ならば、「自宅をオフィスにひとりで起業!」も起業の選択肢として有力だと思います。
 

開業届の提出

個人が新たに事業を始める時には、提出が必要な書類がいくつかあります。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください(※1)。
 
今回は「自宅をオフィスにひとりで起業」がテーマですので、開業届と青色申告承認申請書について見ていきます。
 
個人事業主として仕事を始めたら、原則として税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出する必要があります。事業の開始から1ヶ月以内が期限です。申請書の様式や書き方は国税庁のホームページを参照ください(※2)。
 
屋号や事業の概要を記入する欄がありますので、事前に内容を決めておく必要があります。屋号がない場合は空欄でも構いません。
 
提出方法は税務署に直接出向く以外に、郵送やe-Taxでできます。個人的には税務署で提出することをお勧めします。記入時に不明な点も相談できますし、何よりも税務署に対するハードルが下がります。
 
会社員をしていると税務署は遠い存在になりがちですが、後述する確定申告など、個人事業主にとって避けられないことがやってきます。そんな時、相談できる場所として、実は税務署は頼りになる存在なのです。
 
開業届を提出すると個人事業主となりますので、雇用保険に関する注意点があります。会社を辞めて起業を考えている場合、開業後は失業保険を受給できません。開業したものの短期間で休廃業した場合について、2022年7月1日から特例ができました。詳細は厚生労働省の資料を参照ください(※3)。
 

青色申告を選択するなら「青色申告承認申請書」

事業を始めると、確定申告が必要になります。確定申告の時期は例年2月16日から3月15日です。申告するだけでなく所得税の納付もしなければなりません。遅れると延滞となりますので注意してください。この申告には、白色と青色の2種類があり選択制です。
 
青色申告には、複式簿記に則した帳簿を作成し、損益計算書と貸借対照表を提出することが決められていますが、税務上の優遇措置があります。主な特典は図表のとおりで、今回は(1) (2)が該当すると考えられますが、節税の効果は大きいです。
 
(図表)

図表

 
青色申告事業者になるためには「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
 

提出期限は、
・1月15日までに事業を開始した場合はその年の3月15日
・1月16日以降に事業を開始した場合は事業を開始した日から2ヶ月以内

となっています。

 
開業届や青色申告承認申請書などの書類は、提出すると受付印を押印されて控えが渡されます。これらは、大切に保管が必要です。開業時はいろいろな雑務に追われることも多いので、重要書類用のルーズリーフ等にまとめておくと良いです。特に自宅オフィスの場合、公私混同しないように紙類は区別を心掛けてください。
 
また自宅をオフィスにする場合は、家賃や光熱費などの一部を経費に算入できますが、それぞれの請求書や領収書等の保管も必須です。帳簿の記帳だけでなく、保管ルールを始めに決めておくことが大切です。
 

成功のカギは、ネットワーク&サポーターチーム

「自宅をオフィスにひとりで起業!」自分の思うままに、仕事ができることが1番のメリットではないでしょうか。では「デメリットは?」とたずねられたら、いくつか困るケースが思い浮かびます。
 
基本的にはひとりなので、難しい案件やたくさんの案件が来たときにどうするのか、という問題があります。一般的に、仕事には波があります。
 
暇で仕事がないのも悩みのタネですが、ひとりでこなせない場合も想定が必要です。そんな時に手伝ってもらえる人、相談できる人は強力な味方になります。自宅の仕事部屋にこもってしまうと、ついつい視野も狭くなり孤軍奮闘の様相になりますので、そこは要注意です。
 
ひとり起業だからといってひとりぼっちで抱え込むと長続きしません。どんな時もひとりにならないことが、うまくいく秘訣かもしれません。
 

出典

(※1)国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
(※2)国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
(※3)厚生労働省 2022(令和4)年7月1日から 離職後に事業を開始等した方は雇用保険受給期間の特例を申請できます
(※4)国税庁 はじめてみませんか? 青色申告
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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