更新日: 2023.09.10 働き方
物価高なのに賃金が上がらない! 名目賃金と実質賃金の違いとは?
しかし、残念ながら、実際は賃金が物価上昇に追い付いていないのが現状です。今回は、物価と賃金の関係について、詳しく解説します。
執筆者:下中英恵(したなかはなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
最近の物価高の傾向
総務省が公開している「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)7月分」によると、2020年の物価の平均を100とした場合、2023年7月の物価指数は105.7となっています。前年同月と比べると3.3%の上昇です。
特に、私たちの生活に直接関係する、食料品の値上げ幅は大きいという特徴があります。同じく総務省の調査によると、2020年の物価の平均を100とした場合、2023年7月の食料品の物価は113.1となっています。
前年同月と比べて、例えば、鶏卵は36.2%の値上げ、ハンバーガー(外食)は14.0%の値上げとなるなど、物価高の傾向が続いています。
名目賃金と実質賃金の違い
物価が上昇しても、私たちの賃金はそれほど大きく上がっていません。物価と賃金の関係をチェックするためには、「名目賃金」と「実質賃金」をチェックしてみましょう。
名目賃金とは、私たちがもらえる賃金の金額を指します。名目賃金が上がっても、それ以上に物価が上がってしまうと、私たちの家計は苦しくなってしまいます。一方、「実質賃金」とは、名目賃金の伸び率から物価上昇分を考慮して計算される値のことです。実質賃金は、名目賃金指数を消費者物価指数で除して計算されます。
簡単にいうと、名目賃金の伸び率が1%、つまり私たちがもらえる賃金が1%アップしているとしましょう。しかし、物価が3%アップしていた場合、賃金アップが物価上昇に追い付いていないため、私たちの家計は苦しくなってしまうのです。
これを考慮したものが実質賃金です。実質賃金がプラスとなれば、物価に比べ賃金がアップしていることになります。一方、実質賃金がマイナスの場合、物価に比べ賃金が増えておらず、家計が苦しくなっている状況となります。
物価と賃金の関係や、私たちの家計が良くなっているのかどうかを知りたい場合は、名目賃金だけではなく、実質賃金の値に注目してみましょう。
物価は上がるのに賃金が上がらない
厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査(令和5年6月分結果確報)」によると、6月の実質賃金指数は去年の同じ月に比べて1.6%減少しました。実質賃金がマイナスとなるのは15ヶ月連続です。賃金上昇が物価高に追い付かず、経済的に苦しい状況が続いています。
今後も、食料品などの商品やサービスで値上げが行われる予定があり、物価高の傾向は続くと考えられています。私たちの賃金も物価と同じように上がり、実質賃金がプラスとならなければ、家計が苦しい状態はしばらく続くと認識しておきましょう。
まとめ
名目賃金と実質賃金の違いや、物価と賃金の関係は理解できたでしょうか。
今回ご紹介した内容を参考にしながら、物価高や賃金の傾向をつかみ、自分たちの家計もチェックしてみましょう。
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者