更新日: 2023.09.08 働き方
終電ギリギリまで残業してるのに、残業手当は「月8万円」です。正直納得いきませんが会社には言いにくいです。どうすれば良いでしょうか…?
固定残業代とは
残業手当は、残業した時間に応じて支払われます。5時間残業したら5時間分、20時間残業したら20時間分が受け取れるのが基本です。しかし一定の時間についての残業代を、毎月定額で支払う会社もあります。
例えば「20時間分の時間外労働手当として、毎月3万円を支払う」といった方法です。このような残業代の支払い方を、一般に「固定残業代」や「定額残業代」制度といいます。
固定残業時間より少なく働いても満額支払われる
固定残業代制度では、あらかじめ決められた残業時間(固定残業時間)より実際の残業時間が少なくても、満額の残業代が支払われます。
例えば「20時間分の時間外労働手当として、毎月3万円を支払う」場合、実際の残業時間が18時間でも、5時間でも、「3万円」が受け取れます。仮に残業時間が5時間だったとしたら、原則的な計算方法では「残業代は7500円」のみですから、固定残業代制度は給与の安定に役立っているといえるでしょう。
固定残業時間より多く働いたら、超過分が支払われる
逆に固定残業時間より多く残業した場合は、超過分を別途支払ってもらえます。
「20時間分の固定残業代が3万円」の場合、25時間残業したら「3万円+7500円」がもらえます。30時間残業したら「3万円+1万5000円」になります。
残業が少なくても満額支払ってもらえますし、残業が多かったら超過分が支払われるのですから、固定残業代制度は従業員にとってメリットが大きいものです。
残業手当が増えない理由
一方で「何年も固定残業代が増えない」「長時間働いているのに別途支払ってもらえない」など、固定残業代をめぐるトラブルが多いことも事実です。なぜ、このようなことになるのでしょうか?
昇給したのに、固定残業代はそのまま
まず考えられるのは「基本給等がアップしているのに、固定残業代はそのまま」というケースです。
割増賃金の単価が1500円の場合、固定残業代3万円は残業20時間分に相当します。しかし賃金がアップして割増単価が1875円になったら、3万円では16時間分の残業しかまかなえなくなります。
しかし会社によっては「昇給しているからいいだろう」と固定残業代のことまで考えが及ばず、その結果「入社からずっと残業代が増えない」こともあるかもしれません。
残業時間が増えたのに、超過分が支払われていない
次に、恒常的に残業時間が増えているのに、固定残業代は従前のままということも考えられます。「以前は20時間以内で収まっていた残業が、今では30時間くらいに増えた」といったケースです。
この場合は、固定残業時間を超えて働いた分(上の例では10時間分)が別途支払われていれば、全く問題ありません。しかしそうでない場合は、企業側に労働基準法違反があります。
「終電まで働いているのに8万円」の場合
では冒頭の「毎日帰宅は終電なのに、残業代が月8万円」のケースを考えてみましょう。
終電まで働き、会社を出るのが23時過ぎと想定しましょう。定時にもよりますが、おおむね1日4~5時間は残業していることになりそうです。仮に終電まで働く日が「1ヶ月の半分」だとしても、50時間以上は残業していると考えられます。
この人が月給40万円(基本給等32万円、固定残業代8万円)と想定して、計算してみましょう。
固定残業代8万円から逆算すると、固定残業時間は「32時間」です。そのため、18時間分の時間外手当が未払いになっています(1ヶ月平均所定労働時間160時間、割増率1.25倍として計算しています)。
もし同じ残業時間で、月給32万円(基本給24万円、固定残業代8万円)だったとしても、7時間強の未払い残業時間が出てきます。さらにどちらのケースでも22時過ぎに働いた分については、深夜割増賃金が別途支払われていなければなりません。
残業代が少ないと思ったら
「会社と揉める気はないが、やっぱり残業代が少ないのは困る」という場合は、信頼できる上司に相談してみる方法もあります。
上司に相談する前にチェック
上司に相談するときは、事前に残業時間を計算しておかなければなりませんが、このとき「休憩時間」には注意が必要です。
会社によっては、定時の後・残業の前に、30分程度の休憩を設けていることがあります。この30分は基本的には残業時間にカウントされません。
また、残業時間中に食事や仮眠をしたら、その時間は残業時間から差し引いておきます。このような休憩時間を勘案した資料を作って上司に相談したほうが、説得力があるでしょう。
まとめ
固定残業代は、会社員にとってメリットの多い制度です。しかし会社によっては、実際の残業時間に見合う手当が支払われないケースも少なくないようです。
実際の残業時間から計算した残業代と、支払われている残業代とが乖離している場合は、会社側の対応が間違っていることも考えられます。そうしたときは必要に応じ、信頼できる上司に相談するのもよいかもしれません。
出典
厚生労働省 しっかりマスター労働基準法割増賃金編
川崎北労働基準監督署 割増賃金の計算方法
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士