更新日: 2023.09.06 働き方

「2025年までに有給休暇取得率を70%に」目標と現状の差は?どのような企業が有給休暇を取得できているのか?

「2025年までに有給休暇取得率を70%に」目標と現状の差は?どのような企業が有給休暇を取得できているのか?
現在、国が「2025年までに有給休暇の取得率を70%にする」という目標を掲げています。しかし、現状の有給休暇の取得率は、この目標達成を目指せるような水準にあるのでしょうか。
 
なかには「70%なんて無理! もしかして、自分の職場の取得率は、他社と比較して悪いのだろうか?」と、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、有給休暇の取得率が高い企業の傾向と、取得率が上がらない理由について、ご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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有給休暇取得率が高い企業の特徴は?

まずは、有給休暇の取得率が高い企業の特徴を、従業員規模と業種に分けて、確認していきましょう。実は、規模が大きい企業ほど、有給休暇を取得しやすい傾向にあります(※表1を参照)。
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、従業員が「99人以下」の企業の場合、有給休暇を半分以上取得できている人の割合は、4割以下にとどまります。
 
一方で「1000人以上」の企業では、有給休暇の半分以上を取得できている人は、5割以上に上ります。付与された分をすべて使いきることは難しいものの、実際に、休暇を取得しやすい傾向にあるといえます。
 
表1

企業規模 ~25%未満 25~50%未満 50~75%未満 75~100%
未満
100% 中央値
99人以下 24.8% 36.9% 27% 9.9% 1.4% 40%
100~299人 21.6% 36% 30.1% 11.6% 0.8% 43.8%
300~999人 17.2% 33.9% 38.9% 8.8% 1.3% 49.5%
1000人以上 10.5% 34.2% 41.4% 13.2% 0.7% 53.8%

※独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」を基に筆者作成
 
次に、有給休暇の取得率が高い業種について、確認しましょう。中央値(データを並べたときに中央に位置する数値)と、50%以上の取得率を、それぞれでランキングにすると、表2のとおりです。
 
中央値と、50%以上取得できている人の割合では、ともに、情報通信業と金融業・保険業が、高い水準にあることが分かります。表2からも、有給休暇を取得しやすい企業は、規模の大きい情報通信業者・金融業者・保険業者といえるでしょう。
 
表2

中央値 50%以上を取得できている人の割合
1位 情報通信業
60%
情報通信業
65.5%
2位 金融業・保険業
59.9%
金融業・保険業
64.7%
3位 その他
49%
鉱業・採石業・砂利採取業
50%
4位 製造業
48.9%
その他
49.3%
5位 医療・福祉
46.5%
製造業
48.4%
6位 鉱業・採石業・砂利採取業
46.2%
医療・福祉
47.2%
7位 教育・学習支援業
44.7%
不動産・物品賃貸業
42.8%
8位 電気・ガス・水道・熱供給業/
学術研究・専門技術サービス業
42.8%
サービス業
40.4%
9位 学術研究、専門・技術サービス業
39.4%
10位 不動産・物品賃貸業
41.7%
電気・ガス・水道・熱供給業
37.8%

※黄色箇所は取得率が50%以上の業種
※独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」を基に筆者作成
 

有給休暇取得率が上がらない理由

有給休暇の取得率が上がらないことには、「取得できない理由」と「取得しないでおく理由」の、双方が関係しています。取得できない理由の主なものは、以下の4点です。
 
こうした理由が背景にある場合に、有給休暇の取得率を改善するためには、職場環境を見直す必要があるでしょう。
 

<有給休暇を取得したくてもできない主な理由>

・人手が足りない
・部署の異動や業務の変更によって忙しくなった
・休みを取得した際の代替要員が確保されていない
・繁忙期に入った

 
また、有給休暇をあえて取得しないでおく理由としては、下記の点が挙げられます。就労環境が原因となっている場合もあるものの、なかには、周囲に気を使って休めないケースも見受けられます。
 
その場合は、管理職が有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりに取り組み、休暇への認識を改善していく必要があるでしょう。
 

<有給休暇をあえて取得しない主な理由>

・急用や体調不良のときのために残しておきたい
・休むと、ほかの人の迷惑になってしまう
・休んでいる間の仕事を引き継いでくれる人がいない
・仕事が多すぎて休める状況にない
・周囲が有給休暇を取得しないため、取りにくい

 

有給休暇を取得しやすい環境づくりを進めよう

有給休暇は、従業員数の多い企業のほうが、取得率が高い傾向にあります。しかし、取得率の高い業界でも、国の掲げる「70%」には及ばない状況です。
 
企業が「国の掲げた目標を達成しよう」「人材の定着する企業を目指そう」と考えるならば、有給休暇の取得しやすい環境づくりを進める必要があります。業務量と従業員数のバランスと、現状の取得率や雰囲気などもチェックして、取得しやすい環境に整えていくことが大切です。
 

出典

独立行政法人労働政策研究・研修機構 調査シリーズNo.211「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」 第Ⅰ部 調査結果の概要
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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