在宅勤務中の「中抜け」はNG? 労働時間や残業代はどうやって把握されているの?

配信日: 2023.09.04

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在宅勤務中の「中抜け」はNG? 労働時間や残業代はどうやって把握されているの?
在宅勤務等のテレワークであっても、所定労働時間を超えた勤務を行った場合、時間外労働となり、その分の賃金は当然もらえます。休日労働や深夜業になった場合の割増賃金も同様です。会社は従業員の労働時間を正確に把握し、管理する責任を負っています。
 
在宅勤務の場合に、家事等のためにいわゆる「中抜け時間」として業務から離れる時間もあると思いますが、中抜け時間の取り扱いは就業規則等で定めて運営すべきものです。
 
一方、従業員が事業場外で業務しているため会社が労働時間の把握、計算が困難な場合に「所定労働時間、労働したものとみなす」という制度があります。「事業場外労働のみなし労働時間制」と呼ばれます。ただし、この制度が適用される要件は極めて厳格です。テレワークでは現実に適用されることはほとんどないと考えられます。
 
本記事では、在宅勤務時の労働時間や残業代がどうやって管理されているか、「中抜け」はどのように取り扱われているかについて解説します。

在宅勤務でも残業等の割増賃金はちゃんと支払われる

労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれた状態で業務に従事している時間のことです。たとえ会社の事務所にいなくても、労働時間は適切に管理されるべきものです。
 
在宅勤務等のテレワークでも、通常の事務所での勤務と同様に、時間外・休日労働などを行えば、割増賃金は支払われます。午後10時以降の深夜業なら、深夜労働の割増賃金が支払われます。
 
テレワークガイドラインでは、以下のように会社に適正な労働時間管理を求めています。
 

労働時間の管理方法

原則として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録に基づいて、始業・終業の時刻を確認することが求められています。
 

従業員の自己申告で労働時間を把握する場合の方法

上記の原則的な方法が取れず、やむを得ず、従業員の自己申告によって労働時間を把握する場合は、会社は次のように対応します。

・会社は、従業員に対して自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行う。
・そのうえで、自己申告された労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かを確認する。
・パソコンの使用状況など客観的な事実と自己申告された始業・終業時刻の間に著しい乖離(かいり)があれば、労働時間を適切に補正する。

例えば、申告された時間外でパソコンが長時間起動していた記録がある、外にメールの送信履歴がある、といった場合です。
 
なお、自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、従業員による労働時間の適正な申告を阻害する措置は禁じられています。
 

中抜け時間についてはルールを定めて適切に扱う

在宅勤務等のテレワークでは、家事等で従業員が業務から離れる時間が生じ得ます。いわゆる「中抜け時間」です。中抜け時間について、労働基準法では、会社は把握することとしてもよいし、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしてもよい、とされています。
 
具体的には、会社が行うのは次のどちらかの対応になります。

・会社は、中抜け時間を把握し、休憩時間として扱う。中抜け時間分の勤務については、従業員の希望に応じて終業時刻の繰下げや、時間単位の年次有給休暇として扱うことで調整する。
・会社は、中抜け時間は把握せず、始業・終業時刻の間の時間を、休憩時間を除いて労働時間として取り扱う。

中抜け時間の取り扱いは、あらかじめ会社が就業規則等で定めることとされています。従業員としては、中抜け時間の取り扱いについて、就業規則を確認したり、人事部に説明を求めたりすることで、自社のルールを把握することができます。
 

「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用されることはほとんどない

「事業場外労働のみなし労働時間制」は、従業員が事業場外で業務に従事し、会社がその労働時間の算定が困難なときに、「所定労働時間、労働したものとみなす」という制度です。
 
テレワークでこの制度が適用できるのは、次の2つの要件の両方に該当する場合だけです。

・従業員が、パソコンや電話等のテレワーク用情報通信機器をいつでも切断できる、いつでも機器から離れることができる状態にある。会社支給の携帯電話であっても、応答するかどうかは従業員の自由という状態にある。
・会社からの指示は業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、1日の業務のスケジュール等は従業員に任されている。

 
在宅勤務といっても、会社とオンラインでつながって仕事をしており、1つ目のいつでも情報機器等を切断できるといった状態は考えにくいでしょう。また、2つ目の業務の進め方についても、在宅勤務時でも会社から一定の指示を受けるのが通常でしょう。よって、上記2要件どちらにも該当することは考えにくいと思われます。
 
つまり、テレワークで「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用される場合はほとんどないということになります。
 

在宅勤務こそ労働時間の適切な管理が求められる

在宅勤務の場合、業務時間と家事等の私生活の時間の切り分けがあいまいになりがちで、結果として出社時以上に長時間労働になることも起こり得ます。労働時間管理があいまいなままでは、ワークライフバランスを妨げ、業務の生産性も低下するでしょう。
 
疑問点があれば会社の人事部に照会するなど、適切な労働時間管理が行われるよう従業員も意識的に行動することが大切です。
 

出典

厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインパンフレット
厚生労働省 「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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