更新日: 2023.08.29 働き方
今月は毎日「定時ぴったり」に帰っています。その場合、「固定残業代」は支払われないのでしょうか?
本記事では結局、残業を全くせずに1ヶ月過ぎた場合、給料に含まれている残業代は雇用主である企業等に返還しなければならないのか、労働者(従業員)の立場からみた固定残業制のメリットやデメリットも含めて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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給料に含まれる残業代は返す必要がない
固定残業制はあらかじめ毎月支給される固定給に一定の残業代が含まれている制度ですが、これは実際に定められた残業をしたかどうかにかかわらず支給されます。時間外や深夜、休日労働などが対象で、みなし残業制や定額残業制、一律残業制などさまざまな表現方法があります。
そのため例えば、固定残業制として「20時間の固定残業手当3万5000円分を含む」とされている場合は、実際に20時間残業したかどうかにかかわらず3万5000円は支給されます。そして20時間を超える時間外労働を行った場合は、通常の残業規定によって別途割増賃金が支給されます。
今回のように全く残業をせずに1ヶ月過ぎたとしても、支給される給料には固定残業代が含まれます。残業しなかったからといって固定残業代を抜いた形で支給されたり、後で返還を求められるような場合があったりすると「違法」となるので注意しましょう。
固定残業制のメリット・デメリット
全く残業しない場合でも固定残業代が支給されるとなると、労働者にとってはかなりお得に感じられますが、固定残業制にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
固定残業代のメリット
実際の残業時間の有無にかかわらず固定残業代は支給されるため、従業員の業務効率が上がる可能性があります。
というのも「少し残業するくらいなら給料は変わらないし、積極的に業務を効率化させて定時で帰れるように工夫しよう」という人が増えると考えられるからです。残業代目当てで長時間労働をする人が減るため、企業側としても生産性の向上が期待できるメリットがあります。
もし残業時間が規定された分を超えると通常の時間外手当が別途支給されるため、長時間働いてもサービス残業にはならず損をするわけではありません。
固定残業制のデメリット
一方で、固定残業制には次のようなデメリットがあります。
●基本給が低く抑えられることもある
●管理者側の誤解で長時間労働が横行するおそれがある
例えば次のような求人広告があった場合、毎月受け取れる固定給はどちらも同じです。
A)基本給30万円
B)月給25万円(30時間の固定残業代として別途5万円支給)
ただしBの場合は基本給がAより5万円低くなっています。基本給は通常の残業代やボーナス(賞与)を計算する際のベースとなる部分です。そのため、基本給が低く抑えられるほど、通常の残業代やボーナスも下がります。
求人広告のみ見ると、固定残業代があるものが表面的な数字上は魅力的にうつりやすいですが、ミスマッチを防止するためにも、ボーナスなどを含めて総合的に考えてどうなのか判断しましょう。
固定残業代の注意点
さきほどの求人広告のように、一見すると労働者にとって得なのか損なのか分かりにくい側面もあるのが固定残業代の特徴です。厚生労働省もパンフレット等で注意喚起していますが、あいまいな書き方をしているものも多いため注意しましょう。
●固定残業代を除いた基本給の金額
●固定残業代に関する労働時間数や金額等の計算方法
●固定残業時間を超えた時間外労働などが発生した場合は割増賃金を追加で支払うこと
固定残業制を採用する場合は上記3点をすべて明示する必要があるので、事前に確認することをおすすめします。
まとめ
今回は固定残業制が採用されている会社で働いていて結局残業せずに1ヶ月過ぎた場合に、給料に含まれる残業代は返さないといけないのかどうか解説しました。固定残業制は実際に残業しなくても、あらかじめ決められた分は受け取れるメリットがありますが、基本給が低く抑えられるデメリットもあります。
自分の勤務先が固定残業制を採用しているかどうか分からない、疑問に感じたという場合は、雇用契約書や就業規則を確認してみてください。
出典
厚生労働省 労働条件をめぐる悩みや不安・疑問は労働条件相談ほっとラインへ
厚生労働省 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー