更新日: 2023.08.25 働き方

固定残業時間は「30時間」ですが、結局「40時間」残業しました。追加の残業代をもらえなかったのですが、これって法律違反じゃないんですか?

固定残業時間は「30時間」ですが、結局「40時間」残業しました。追加の残業代をもらえなかったのですが、これって法律違反じゃないんですか?
求人広告に「固定残業代○○円を含む」といった記載を多く見かけます。最近では、有名なインターネット広告代理店が「初任給(月給)42万円、固定残業代月80時間を含む」といった賃金設定を打ち出して話題になりました。
 
適切に運用すれば効果的な制度ですが、企業と従業員ともに理解が不十分で労使トラブルになることもあります。本記事では、固定残業代制度のメリットとデメリット、正しい運用方法を解説します。

固定残業代とは何?

「固定残業代」とは、実際に残業したかどうかに関係なく、給与と共に支払われる定額の残業代のことです。よって、固定残業代が「30時間分」であれば、実際の残業時間が10時間であっても20時間であっても、毎月「30時間分」の残業代は支払われることになります。
 
会社側のメリットとしては、決められた残業時間数(本記事では30時間)の範囲内であれば残業代計算をする必要がないため、給与計算の負担が軽減されます。
 
従業員側のメリットとしては、実際に残業していなくても一定の残業代が支払われるため「固定残業分の時間より早く仕事を終わらせて帰ろう」と考えることから、「だらだら残業」を抑止する効果が期待できます。
 

固定残業代が法律上認められる要件

固定残業代に関する裁判判例を受け、厚生労働省は通達「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」において、固定残業代が法律上認められる要件を次の通り示しました。

1.基本給に当たる部分と固定残業代に当たる部分とを明確に区別すること
2.固定残業代に当たる部分の金額が労働基準法第37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払わなければならないこと

2.のケースが、まさに表題の「40時間残業したけど、30時間分の固定残業代しかもらっていない」に当たります。固定残業代(30時間分)を超えた残業代(10時間分)の割増賃金を支払わないのは法律違反となります。
 

追加の残業代がもらえない! そんなときは?

労働条件に疑問を感じたときは、労働基準監督署などへ相談をしましょう。本記事のように残業しているにもかかわらず割増賃金が支払われないといった賃金不払い残業などは、労働基準監督署に相談すれば、労働基準監督官が直接会社に改善を求めるケースもあります。
 
また、明らかな証拠書類(労働契約書や出退勤時間・残業時間が証明できるもの、給与明細書など)を持参することで、担当者の理解を得やすく、話が早く進むことが期待できます。
 

まとめ

冒頭にも触れた通り、固定残業代は適切に運用されているのであれば、問題はありません。しかし、固定残業代制度が正しく運用されていないケースもよく聞きます。会社の固定残業代について気になる点があれば、以下を確認してみてください。

・基本給と固定残業代が区別されているかどうか
・就業規則などの社内規定に固定残業代制度の記載があるかどうか
・差額分の残業代支給の有無

特に、基本給部分の割合が少ない場合は、最低賃金を下回っていないかどうかチェックすることも重要です。2023年10月に最低賃金の改定が予定されており、会社側に確認するいい機会ともいえます。
 
会社は、固定残業代制度を運用する際には、基本給と固定残業代の区別や算定方法を明確にし、社内規定等で周知することが必要です。また従業員は、固定残業代制度が適切に運用されているかどうか、常に確認するよう注意するべきです。
 
これらのことに気を付けながら、労使双方にとってメリットになる制度にしていきましょう。
 

出典

厚生労働省 時間外労働等に対する割増賃金の解釈について
厚生労働省 令和5年度 地域別最低賃金答申状況
e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:遠藤良介
社会保険労務士、FP2級

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