更新日: 2024.10.07 その他家計

「アメリカに留学したい!」と突然言われたら… 親はいくら用意しておけばいい?

「アメリカに留学したい!」と突然言われたら… 親はいくら用意しておけばいい?
海外でファイナンシャルプランナーをしていると、筆者自身の留学経験へのご質問をいただいたり、駐在員のお子さまたちの進路についてのご相談をお受けすることもあります。
 
文部科学省が昨年12月に発表した『「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について』によると、2016年度の日本人学生の海外留学の数は、前年比15%アップの 約9万6000人。
 
同省の発表は日本学生支援機構の調査を元にしており、2009年は3万6000人程度にしか満たなかった留学生の数が7年で約2.6倍になっていることを示しています。
 
海外大学への進学をご希望になったり、短期留学をご希望になったりしたら、一体いくらくらいの『追加資金』がかかるでしょうか?

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1345878.htm

田中ゆき恵

Text:田中ゆき恵(たなか ゆきえ)

イギリスCII AFP

アメリカパブリックアイビー、The University of Michigan, Ann Arborを卒業後、マレーシアを本社にもつイギリス系IFA、Infinity Financial SolutionsにてシニアコンサルタントとしてFP歴10年以上のキャリアを持つ。バンコク、ジャカルタ、クアラルンプールを中心に、海外居住者のために、財テクゲームを取り入れたお金セミナーを実施。海外居住中のへそくり術、教育資金のため方、老後資金準備法、相続対策などを得意としており、わかりやすさと包括的なアドバイスをモットーに活動中。各地の日本人向けフリーペーパーなどでも執筆協力している。
https://www.facebook.com/InfinitySolutionsJapaneseService/

海外の大学での学費

文部科学省のホームページ『大学生の留学準備ガイド』によると、留学の方法として大きく4つの方法に分類されています。
https://www.tobitate.mext.go.jp/univ/planguide/
 
(1)短期:在籍大学などのプログラムで留学

まずは気軽に留学を体験してみたい、長期留学に備えて海外生活に慣れておきたい人におすすめです。
・授業料の目安:15〜50万円/月
・滞在費の目安:5〜15万円/月
・渡航費目安:10〜20万円/月
合計:30〜150万円程度
 
(2)短期:その他の留学(プログラムにより異なる)

在籍大学のプログラムと異なり、希望の渡航先、内容、期間、予算に応じて数多くの中から選択が可能です。海外の学校や海外のプログラム、政府や民間団体の留学プログラムに直接申し込むか、留学エージェントを通じて申し込みます。
 
(3)中・長期: 在籍大学等のプログラムで留学

本格的に語学力や異文化対応力を向上したい、現地の学生と学びたい人におすすめです。在籍大学等のプログラムで留学方法には、交換留学、単位認定留学、ダブルディグリーがあります。
交換留学の場合は、在籍大学等への学費だけで海外大学への追加の学費負担がなく単位を取ることができます。
 
単位認定留学の場合は、追加の学費負担はかかりますが、在籍大学等によっては単位の互換を条件付で認める「単位認定留学」の制度があります。また、ダブルディグリーと言って、日本と海外両方の単位を取ることで両方の学位を取得する制度もあります。
 
・授業料の目安:(渡航先では)不要
・滞在費の目安:5〜15万円/月
・渡航費目安:10〜20万円/月
合計:90〜260万円程度
 
(4)中・長期:その他の留学

短期同様、直接もしくは留学エージェントを通じて申し込みます。在籍大学のプログラムと異なり、希望の渡航先、内容、期間、予算に応じて数多くの中から選択が可能です。
 
筆者の場合はパターン(4)で4年間留学しました。気をつけなければならないのが、学費以外に、寮費(もしくは下宿費用)、生活費、保険、ビザ取得費用、教科書代、渡航費用学生自治会費、その他諸経費と、さまざまな費用がかかることです。
 

日米の大学学費の差

さて、ここでは学費のインフレ率を確認してみましょう。
 
U.S. Bureau of Labor Statisticsが2016年に発表した資料によると、2006年1月から2016年1月までの10年間の大学の学費上昇率は161.9%。10年間で1.6倍にもなっていることがわかります。ちなみに、教科書代は同期間で183.5%の上昇率。宿舎費用も149.8%の上昇率ですので、例えば年間250万円相当だった学費が375万円程度に上がっているということになります。
 
参考:The Bureau of Labor Statistics(アメリカ合衆国労働省労働統計局) The Economics Daily 2016年8月30日 College tuition and fees increase 63 percent since January 2006
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2015/12/25/1365662_03.pdf
 
一方、文部科学省の国公私立大学の授業料等の推移によると、同時期の日本では(平成17年から27年)、学費と授業料を足した数字で計算しても、国立は変化なし、公立は0.4%程度、私立でも1.34%程度と落ち着いています。もちろん、あくまで全国平均であり、学校によっての差があります。
 
アメリカと比較すると、日本の大学の学費の安さがと、値段が上がっていないことがわります。
 
筆者がファイナンシャルプランナーとしてセミナーに登壇する際に、受講者の皆さんから伺う、学資保険で満期時に受給できる金額として一般的な額は、300万円程度。今の価値なら私立の2年目くらいまでは賄えるかもしれませんが、あくまでも学費及び入学金のみのことですので、入学前準備(塾・予備校・入試費用)留年、途中の私費留学、生活費などの不確定要素を考えると、既存のプランだけでは賄いきれないかもしれません。
 

 

将来の教育資金に向けた対策

留学費用は、大学費用と同様に、発生するかもしれないし、しないかもしれません。
 
『うちは学資保険に入っているから』と安心していたら、『やっぱりうちはお金がないから、(進学や留学を)諦めて』とお子さんに伝えないといけないような苦渋の事態になってしまわないよう、できることを少しずつ始めましょう。例えば、こんなことを一度ご家族で話し合ってみてください。
 
—固定費のスリム化(既存の保険プランの見直し)
—既存貯蓄プランの貯蓄性の見直し
—積立(先取り貯蓄—とにかく使えないようにする)
—満期のない貯蓄の導入(満期を自分で決められるタイプ)
 
ポイント1:家計の中の『固定費』とは、一般的に住宅や光熱費、交通費(車)や教育などに加えて、既に利用している保険各種の費用も入ります。家計のスリム化を目指す際には、この『固定費』の中でも特に『住宅』『車』『通信』『保険』などの、『大型固定費』に着目します。
 
—この家は、家族構成に比して今のサイズが必要か?ローンの組み方は?
—この車は必要か?どのくらいの利用頻度?駐車場代は?ローンは?
—塾や予備校、習い事のコスパは?
 
などの改善を図るとともに、『保険』はその利用目的に立ち戻って、もう一度見直しをしてみてください。元々の目的は生命保険の保障なのか、貯蓄なのか、それとも医療なのか。再度考えてみると良いでしょう。
 
ご相談者の皆さんに多いのは、『貯蓄目的で入った』のに、医療特約をたくさんつけていたり、生保部分の保障額が大きかったりするケースです。特約も保障もタダではなく、その分の保険料を、プランの中で引き落とされているのです。従って、本当に『貯蓄』が目的だったのであれば、特約や保障は少なくして、プラン自体の貯蓄力を損なわないようにしましょう。
 
ポイント2:『積立』は『先取り貯蓄』という言い方をすることからもわかりますが、将来のために資金を使わないためにロックしてしまう方法です。『余ったら貯蓄』するより、積立で先によけてしまう方が確実に貯まります。
 
ポイント3:『満期』=『お金をもらえる日』と思っている方がほとんどだと思いますし、それは間違っていません。しかし言い方を変えると、=『(本当はもうちょっと運用しておきたいのに)金融機関が資産の売却日を決めてしまっている』ということでもあります。その『満期日(売却日)』に、資産価値が上がろうと下がろうと、利用者はコントロールできないのです。
 
『定期』は『期間』が『定まっている=満期がある』プランのこと。そこで、『満期のないプラン』にも目を向けて見てください。貯蓄型保険でも満期は利用者が決めるタイプのものもありますし、投資信託などの『オープン型』と呼ばれるものは満期のないタイプです。
 
個別銘柄の株を購入するのもオープン型投資に当たります。今までの概念にとらわれず、いろいろなプランを勉強して、運用方法を分散することで、今の余剰資金を将来のために最大限に活用するチャンスが生まれます。
 

まとめ

『グローバル化』と言う言葉が一般的になって随分経ちますが、その言葉が浸透することに伴い、留学 にかかる教育コストも随分と上昇していることをご覧いただきました。
 
日本居住でも海外居住でも、お子さまの教育資金は同様に発生します。その中で、『大学進学』という選択の岐路に立たされた時、昔と違って国内外共にさまざまな選択肢が与えられている昨今、ご家庭ごとの準備も、従来の一般的な方法だけでは賄いきれない事態も発生する可能性は否めません。
 
『日本人はお金に関する教育が遅れている』と言われがちですが、1)将来の必要経費を再計算し、2)ご家庭の状況に合わせて固定費のスリム化を図るなど、『将来のための調整』はお早めに。
 
また、『知っているかいないか』が、先々大きな差を生むことがあります。お金の知識をつけることで、『定期』『オープン型』『配当型』など、いろいろな貯蓄法で将来の礎を築き、『転ばぬ先の杖』を何種類か持っておけると安心ですね。
 
Text:田中 ゆき恵(たなか ゆきえ)
イギリスCII AFP

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