更新日: 2023.08.21 働き方
上司から「飲み代1000円でいいから頂戴」と言われましたが、逆に残業代として請求してもいいですか?
人によっては「仕方ない」と思うこともあれば、「こっちは残業代を請求したいのだけれど」と思うこともあるでしょう。そこで、上司との飲み会について、残業代が請求できないか考えてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
残業代が支払われる「残業」の定義は?
残業とは、所定労働時間を超えた部分のことをいいます。例えば1日の所定労働時間が7時間とされている方が8時間働いたら、その1時間についてはいわゆる残業扱いになり、残業代が支給されます。
法律上、残業代は通常の賃金が1.25倍されて支払われますが、実際には1日の実労働時間が法定労働時間の8時間を超えた場合に支払われます。割り増しされた残業代を受け取るには、会社の所定労働時間を超えただけでは足りないことに注意してください。
例えば、時給1000円で1日の所定労働時間が7時間の方が1時間残業しても、割り増しのない時給1000円分の給与が増えるにとどまります。1.25倍割り増しされた1250円の時給を得るには、9時間働くことが必要というわけです。
また、残業代が支払われるのは、その時間が労働時間に該当する場合のみです。労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。その指揮命令が明示的か目次的かに関係なく、業務をしていれば労働時間に該当するとされています。
すなわち、上司との飲み会で残業代を請求するには「その場が指揮命令下にあり、労働時間に該当するか」がひとつの鍵となるわけです。
上司の誘い方によって結論が変わる可能性大
現実にはもろもろの状況全てを加味した上での判断となるため、必ずしもこの結論が正しいわけではありませんが、理論上、残業代を請求できるか否かは、上司の誘い方によって分かれるでしょう。
例えば、「部のミーティングでもあるから、必ず全員参加するように」と言われて、仕事の一環として強制的に参加を余儀なくされたのであれば、指揮命令下にあると判断され、業務に該当する余地がありそうです。それにより、法律上は残業代が生じ、請求できる可能性もあるでしょう。
一方で、上司から個人的に「都合が合えばでいいから、たまには飲みに行こうか」と業務とは関係なく任意で誘われたような場合は、指揮命令下になく業務でもないと判断され、残業代を請求できる可能性は低いでしょう。
ただし、参加しないことで後日ハラスメントを受ける場合、明らかに人事査定に反映されている、給与が減額となるなど実質的に強制である場合や不利益となることが明確にあるというような場合は、事実上の強制扱いとなる可能性もあります。
なお、「飲み代1000円でいいから頂戴」と飲み代について一部負担を求められたことを根拠に残業代を請求しようとしても、それだけでは業務としての関連は薄く、請求は難しそうです。
飲み会の時間分を残業代として請求するのは簡単ではない
飲み会が残業に該当するかは個別の具体的な状況によって異なりますが、実際にそれを立証し、請求するのは、容易ではないでしょう。また、請求できるとしても、その後の職場でのことを考えると、安易に請求するべきでもありません。
もし、飲み会が残業扱いにならないことに悩んでいるのであれば、全国の労働基準監督署などに設置されている、総合労働相談コーナーなどへ相談することも検討してみてください。そうすることで、何らかのアドバイスを得ることができるはずです。
執筆者:柘植輝
行政書士