更新日: 2023.08.14 働き方

パートを2ヶ所かけ持ち中。合計で「8万8000円」を超えた場合も扶養から外れるの?

パートを2ヶ所かけ持ち中。合計で「8万8000円」を超えた場合も扶養から外れるの?
物価上昇が続いていますが、夫の収入が増えても物価上昇のほうが大きく、家計が苦しいという人も多いのではないでしょうか。これまでパートで働いていた妻が、さらにパートのかけ持ちをして、収入が増えた場合の注意点を考えてみます。
吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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社会保険の扶養の要件

「103万円の壁」や「130万円の壁」といった、ある一定の収入を超えると負担が増える「壁」といわれる境界線があります。
 
「103万円の壁」は、夫の所得税の計算上の配偶者控除が受けられなくなる額で、103万円を超えると201万円まで配偶者特別控除が適用され、段階的に控除額が減少していきます。
 
「130万円の壁」は社会保険の収入要件となり、第3号被保険者となり、夫の扶養として、保険料負担なしで社会保険に加入できる額になります。年収130万円を超えてしまうと、勤め先の社会保険に加入するか、第1号被保険者として国民年金と国民健康保険に加入することになります。
 
今回のケースでは、8万8000円を超えた場合ということなので、年収にすると約106万円になります。106万円はどんな制度の要件なのでしょうか。

106万円は社会保険加入要件

これまでパートでA社に勤めていた妻の年収は84万円(月収7万円)でしたが、昨今の物価上昇を受け、さらにB社で働き、月に1万8000円の収入を増やすことにしました。2ヶ所の収入を合わせると年収105万6000円、月収8万8000円となります。
 
妻の年収は103万円の壁を超えることになりましたが、配偶者特別控除の対象となり、夫の所得が900万円以下の場合は、所得税の税額控除に変化はありません。
 
表1は配偶者特別控除の金額の表になりますが、年収106万円では、給与所得控除55万円を引いた51万円が所得になります。
 
表1

控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1000万円以下
配偶者の合計所得金額 48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超 
100万円以下
36万円 24万円 12万円
100万円超 
105万円以下
31万円 21万円 11万円
105万円超 
110万円以下
26万円 18万円 9万円
110万円超 
115万円以下
21万円 14万円 7万円
115万円超 
120万円以下
16万円 11万円 6万円
120万円超 
125万円以下
11万円 8万円 4万円
125万円超 
130万円以下
6万円 4万円 2万円
130万円超 
133万円以下
3万円 2万円 1万円

国税庁ホームページ「配偶者特別控除」より筆者作成
 
今回のケースでは年収105万6000円になりますが、月額8万8000円以上の収入になった場合には、社会保険の加入要件に該当する場合があります。前述で「130万円の壁」を超えた場合は社会保険の扶養から外れ、自分で何かしらの社会保険に加入しないといけないとしていますが、では、この106万円はどのような額なのでしょうか。
 
この106万円という額は、2022年10月から適用されている社会保険加入要件になります。
 
具体的には、従業員101人以上の会社が対象となり、所定労働時間が週20時間以上、月額賃金が8万8000円以上あり、さらに2ヶ月を超えて継続的に働く場合に、社会保険に加入しなくてはならなくなりました。さらに2024年10月からは、従業員が51人以上の会社が対象となり、社会保険の加入者が増えると思われます。
 

今回のケースでは加入が必要なのか?!

あらためて今回のケースをみてみると、パートで働く先を1社から2社にしたことによる収入増の事例です。この場合は、たとえA社の従業員数が101人以上であったとしても、社会保険加入の要件にあたらないことになります。A社だけで収入が増えた場合には、扶養を外れて自分で社会保険に加入する必要となります。
 
ただし、パート先に提出する「給与所得者の扶養控除等申請書」を2ヶ所に提出することはできません。新たに働き始めたB社の給与からは所得税が源泉徴収されることになり、確定申告を行い、引かれた所得税の還付を受ける必要が出てきます。
 

まとめ

「103万円の壁」や「130万円の壁」は聞いたことがあっても、「106万円の壁」は聞いたことがないという人は多いかもしれません。
 
2022年10月より社会保険の加入要件が見直され、従業員数101人以上の会社に勤めていて、月に8万8000円以上の収入となる人は社会保険に加入する必要が出てきたことで、「106万円の壁」が意識されるようになりました。
 
2024年10月からは51人以上の従業員となることで社会保険加入者は増えると思われます。ただ金額だけにとらわれず、将来の年金や保障についても考えた上で、収入を増やすことも検討しましょう。
 

出典

国税庁 配偶者特別控除
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー

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