更新日: 2023.08.10 働き方
アルバイトでも「有給休暇」がもらえるって本当ですか? 勤続1年未満ですが大丈夫でしょうか?
昨今の「働き方改革」でも話題に上がった有給休暇ですが、一方で、有給休暇に関する疑問もよく耳にします。
本記事では、有給休暇の付与要件や取得条件などに触れながら、「パートやアルバイトだと有給休暇はもらえるのか」といったありがちな疑問について解説します。
有給休暇の基礎知識
まず、有給休暇の基本的な知識を抑えましょう。
図表1
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況 労働者1人平均年次有給休暇取得率の年次推移
図表1の通り、年次有給休暇の取得率は令和3年に58.3%まで上昇しており、職場において以前よりも有給休暇が取りやすい環境になりつつあることが分かります。
有給休暇の付与要件
年次有給休暇が付与される要件は次の2つです。
(1)雇い入れの日から6ヶ月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤していること
上記の2要件を満たすと10労働日の年次有給休暇が付与されます。以降、(2)の要件を満たしていけば図表2の日数が付与されることになります。
図表2
厚生労働省 FAQ(よくある質問)-労働基準行政全般に関するQ&A
なお、図表2が適用されるのは「週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者」です。また、年次有給休暇は労働者の権利であるため、労働者の請求した時季によって事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、使用者は労働者の請求通りに取得させなければなりません。
年次有給休暇~こんな場合はどうなる?~
もともと予定されている年次有給休暇の付与や取得なら問題ありませんが、イレギュラーなケースも多々あります。そんな年次有給休暇の取得について知っておきたいことを、ケース別に解説します。
パート・アルバイトは年次有給休暇がもらえる?
図表3
厚生労働省 FAQ(よくある質問)-労働基準行政全般に関するQ&A
図表3は「週所定労働時間が30時間未満、かつ、週所定労働日数が4日以下」の労働者に適用されます。主にパート・アルバイト労働者が該当します。ただし、図表2の付与日数に比べて少なく、所定労働日数に比例して日数が決められていることから「比例付与」といわれることもあります。
パート・アルバイト労働者であっても、「雇い入れの日から6ヶ月経過していること」「その期間の全労働日の8割以上出勤したこと」がクリアできていれば、図表3の通り年次有給休暇が付与されます。
有給休暇がもらえなかった場合、その理由は以下の2パターン考えられます。
(1)会社がパート・アルバイト労働者に対する理解がなかった、知らなかった。
(2)パート・アルバイト労働者が契約シフト通り勤務できず「全労働日の8割以上出勤」できなかった。
例えば、週所定労働日数が2日であるにもかかわらず、平均して週1日しか勤務できなかった場合は(2)のケースにあたります。
退職日に有給休暇が残っていたら、もう使えないの?
「退職日までに残りの有休を消化した」といった話をよく聞きます。退職の申し出をした時点で、残っている年次有給休暇を申請し、それにあわせて引き継ぎなどのスケジュールを組んでいくのが一般的です。
ただし、業務の都合などにより、退職日までに有給休暇を取得しきれないケースもあります。その場合の取り扱いが問題となります。
「年次有給休暇の買い上げの予約をし、本来請求できる日数分の年次有給休暇を減らす、あるいは与えないことは法律違反である」とされています。冒頭で触れたように、年次有給休暇が「心身の疲労回復」を目的としていることに反してしまうからです。
一方、労働者が年次有給休暇を申請せず、退職などによって残った有給休暇が消滅してしまう場合は、会社側はその残った日数に応じて調整的に金銭給付(事後的な買い上げ)することは可能です。
図表4のように2つのケースが考えられます。
図表4
e-Gov法令検索 労働基準法より筆者作成
よって、退職申し出をする際は、残った有給休暇もあわせて取得申請することをおすすめします。
効果的に年次有給休暇を取りましょう
正社員のみならず、パート・アルバイト労働者にも付与される年次有給休暇。自身に有給休暇があるのかどうか確認し、効果的に計画的に取得することで「心身の疲労回復」を図り、仕事もプライベートも充実した日々を送りましょう。
出典
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 FAQ(よくある質問)-労働基準行政全般に関するQ&A 年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。
執筆者:遠藤良介
社会保険労務士、FP2級