更新日: 2023.07.29 家計の見直し
今どきの夫婦は、お財布は別々が当り前?
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
自分の稼ぎは自分で管理
ご夫婦で自営業を営むAさん夫妻。Aさんはご主人の会社の従業員という形で給料をもらっています。生活費や子どもの教育費は、それぞれが費目別に分担し、バランスを取って負担していると言います。
経理を担当しているので、Aさんは2人の給料を把握しているそうですが、ご主人の手持ち資産については知らないそうです。お互いに聞くことはタブーで、“今後も知ることはないと思う”と断言しています。
Aさんは40代で、同世代のBさんも同意見で「最近はみんなそんな感じです」とのこと。共働きが主流になりました。パワーカップルと呼ばれる夫婦がペアローンを組み、高額のタワーマンションに住む時代です。“夫婦それぞれが稼ぎ、それぞれが管理する”というのも、理にかなっているのかもしれません。
別々のお財布を1つにするタイミング
「最近は夫婦別財布が標準」という話をしたAさんに対し、シニア世代の先輩たちは即座に反応しました。「何かコトが起きたらどうするの? いつまでも元気じゃないし、いつ何が起こるか分からないのよ」。
確かに「人生山あり谷あり」を経験済みの先輩世代にとっては、“わが家のお金に関する情報は共有しておくべき”がいかに大切か、感じることがあるのかもしれません。
終活の中で、お金関する整理事項の第一歩は、資産の棚卸です。自分でも自身の資産を把握できていないことも多いくらいですから、資産整理の必要性は絶対です。どうしても金額などを知らせたくない場合でも、取引金融機関やパスワードなどは家族が分かる状態にしておくように心がけてください。
人生にはいくつかの節目があります。ライフプランを考える時、結婚・出産・住宅購入などの際に大きなお金が動きます。専業主婦世帯が多かったことも大きな一因かもしれませんが、シニア世代が1つの財布に収束していることを考えると、いずれかのタイミングで、夫婦の別財布制度が解消されているかもしれません。
60歳代のBさん夫妻の場合は、ご主人の定年が節目だったと言います。退職金を受け取った時、今後のライフプランを考える大切なタイミングです。たとえば金融資産を整理して、近々に使うお金・将来使うお金・残すお金に色分けをする作業があります。
どのイベントに予算をいくら充てるのかはもちろんですが、住宅ローンが完済できていない場合の返済スケジュールなど、夫婦で話し合うことはたくさんあります。夫婦といえども金銭感覚は違います。夫婦円満のためにも、溝を埋める工夫が必要だと思います。
“お金の使い方”ほどほどに口出しは必要かも
何かあった時に……という以外にも、情報を共有していないことによって起きるリスクはあります。これまでに受けた相談の中で、「資産情報が共有できていれば避けられたのでは」という“タラれば”の例は次の2つです。
(1) “自分は貯金ゼロだけど、配偶者は貯金しているだろう”とお互いに思っていて、実は貯金ゼロだった。
(2) 配偶者が借金していても分からない。
給料を継続して得ている場合は、毎月の収支が一時的にマイナスになっても取り返すことができます。ですが、それが重なると自転車操業になってしまうことがあります。ダブルインカムの場合は、すぐに家計が破綻することは少ないですが、逆に負債が大きくなるまで放置されてしまうことがあります。
「もうダメ」となってから発覚して、寝耳に水でビックリ、となる場合もあります。「お互いの資産に口出しは無用」という暗黙のルールがあったとしても、このようなリスクがあるという認識は必要です。「放任は危険」と心得ましょう。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士