更新日: 2023.07.28 働き方
退職予定ですが、有給が残っています。会社に買い取ってもらうことはできるのでしょうか?
この結果から、例えば退職する前に残っている有給を消化しようとしても、実は、思いどおりに取得できていない状況が考えられます。
今回は、有給取得の原則を説明するほか、退職時に有給を会社に買い取ってもらうことの可否について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
有給取得の原則事項
労働者が有給を取得する権利を守るために、労働基準法では以下の原則事項が定められています(※2)。
1. 有給の付与要件と付与日数
事業主は、雇用された日から6ヶ月間継続して勤務し、その全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、10日の有給を付与する必要があります。
その後、有給は6ヶ月経過日から起算して、継続勤務年数1年ごとに1日、3年以降は1年ごとに2日(最高20日まで)付与されます。(表1)
(表1)
継続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
※e-Gov法令検索 「労働基準法」を基に筆者作成
なお、パートタイム勤務など、週の所定労働日数が少ない労働者の場合、有給の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。
2. 有給の取得時季
事業主は、原則として労働者が請求する時季に有給を与えなければなりませんが、その時季に有給を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合、他の時季に有給を変更することができます。
3. 有給の時効と繰り越し
有給を請求する権利の時効は2年です。前年度に使用されなかった有給は、翌年度に限って繰り越して取得することができます。
4. 有給の買い取りについて
法で定められた有給を事業主が買い取ることは、労働者に与えられた権利を奪うことになり、法律違反として6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
退職時に残っている有給を処理する方法は
有給取得の法的原則を踏まえた上で、退職時に残っている有給を処理する方法について解説します(※3)。
1. 退職までに有給を取得
退職する労働者は、退職日までに残っている有給の取得を事業主に請求することが可能です。この場合、事業主は退職日以降に有給の時季を変更することはできないので、労働者の請求に基づいて有給を付与しなければなりません。
ただし、退職する労働者は有給の取得までに業務の引き継ぎを済ませておくなど、業務に支障が生じないように配慮することが望まれます。
2. 未消化の有給を退職する際に買い取ってもらう
退職する際に有給が残っていた場合でも、その有給を退職後に持ち越すことはできません。従って、退職時に残っていた有給を事業主が買い取り、日数に応じた金銭を労働者に給付することは、労働基準法に違反するものではありません。
ただし、退職に伴って消滅する有給を、事業主が買い上げることは義務付けられていません。
まとめ
退職時に残っている有給を事業主に買い取ってもらうことは、法律上では必ずしも違反とはなりませんが、事業主が有給を買い取る義務もありません。もちろん、退職までに有給を取得する権利はありますので、業務の引き継ぎなどに配慮した上で有給の取得を請求するといいでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況
(※2)e-Gov法令検索 労働基準法
(※3)厚生労働省 長野労働局 年次有給休暇に関する相談
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士