更新日: 2023.04.28 働き方
【残業割増率50%以上】月60時間以上の時間外労働について解説
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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残業割増率とは?
会社は従業員に法定労働時間を超えて労働させた際、割増賃金を支払わなければいけません。残業割増率または割増賃金率とは時間外労働をした場合に支払われる割増賃金の割増率のことを指します。
労働基準法に定められた法定労働時間を超えた労働を時間外労働と呼び、法定労働時間とは1日のうち休憩時間を除き、8時間を超えて労働させてはならないとされている労働時間の上限のことです。
時間外労働をさせた場合は25%以上50%の範囲で割増賃金を支払う必要があり、月60時間以上を超える時間外労働については50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
2023年4月から中小企業の残業割増率も50%に
中小企業には猶予措置がとられており、月60時間を超える時間外労働も残業割増率は25%以上とされていましたが、2019年に働き方改革関連法が施行され、猶予措置が廃止されることになりました。2023年4月からは図表1のとおり中小企業においても月60時間を超える時間外労働について残業割増率を50%以上支払う必要があります。
図表1
厚生労働省 働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて~
中小企業かの判断については図表2のように企業単位で判断されます。
図表2
厚生労働省 働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて~
改正のポイントは2点です。
●月60時間を超える時間外労働について、中小企業の事業主も残業割増率50%以上の割増賃金を支払う必要がある
●25%~50%の引き上げ分の割増賃金の代わりに代替休暇制度を活用することもできる。
それぞれ詳しく解説いたします。
割増賃金率の引き上げ
1ヶ月の労働時間を合計して60時間を超えた時点で残業割増率50%以上の割増賃金を支払う必要があります。労働時間を合計する際に法定休日は含みませんが、土曜日などの法定外休日に行った労働は時間は含まれます。
代替休暇制度の活用
月60時間を超える時間外労働をした従業員に対し、割増賃金を支払う代わりに有給休暇を付与することも可能です。これを代替休暇制度といいます。
代替休暇制度を活用するには、会社と従業員で労使協定の締結が必要です。代替休暇制度を利用するかは従業員の意思に沿うため、会社から強制することはできません。
労使協定では下記の4つの事項を定める必要があります。
●代替休暇の時間数の具体的な算定方法
●代替休暇の単位
●代替休暇を与えることができる期間
●代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払い日
月60時間を超える残業をした場合に割増賃金の計算方法
割増賃金率が50%以上に引き上げになると紹介しましたが、時間外労働が月60時間を超えた部分のみになります。60時間を超えない場合は、残業割増率は25%で計算するため注意が必要です。割増賃金は下記の計算式で計算します。
1時間あたりの基礎賃金×各種割増率×対象となる時間=割増賃金
たとえば1時間あたりの基礎賃金が2000円の従業員が80時間の時間外労働を行った場合、下記の通り計算します。※深夜労働や休日労働はしていないとする
(1)60時間以下の割増賃金
2000円×1.25×60=15万円
(2)60時間を超える割増賃金
2000円×1.50×20=6万円
(1)と(2)を合計し、15万円+6万円=21万円が割増賃金として支払われます。割増率には図表3のとおり3種類あり、それぞれ割増率が定められています。
図表3
東京労働局 しっかりマスター労働基準法割増賃金編
月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の引上げの背景
月60時間を超える時間外労働に対する残業割増率の引き上げは、2010年の改正労働基準法の施行により大企業が適用されたことから始まりました。中小企業の猶予措置が廃止され、2023年4月からは大企業・中小企業ともに月60時間を超える時間外労働に残業割増率50%以上の割増賃金を支払われる必要があります。
引き上げの背景は、長時間労働を抑制し労働者の健康を確保することを目的としています。残業問題は深刻ですが、労働時間を適正に把握することや業務効率化が求められることが期待できるでしょう。
出典
労働基準法 第32条
労働基準法 第37条
厚生労働省 月60時間を超える法定時間外労働に対して
東京労働局 しっかりマスター労働基準法割増賃金編
厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
厚生労働省 月60時間を超える法定時間外労働に対して
厚生労働省 徳島労働局 改正労働基準法が平成22年4月1日から施行されます
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー