更新日: 2023.04.07 その他家計
「エンゲル係数が高い=低収入」はウソ!? 令和の消費マインドと食費の関連性とは?
しかし、時代の移り変わりとともに消費傾向が変化した今、この前提は成り立たなくなっているようです。
本記事では、エンゲル係数と収入の関係性や上昇要因、「エンゲル係数が高い=低収入」を覆す令和の消費傾向について、詳しく解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
エンゲル係数とは? 年収別の数値の傾向を調査
エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費の割合のことです。
[食費÷消費支出×100=エンゲル係数(%)]の公式で求められます。
生命維持に関わる食費は、簡単に削れない支出項目であることから、収入が低いほど、消費支出全体に占める割合が高くなるとされてきました。
ここで、総務省統計研究研修所が公表しているデータをもとに、1946年から2005年までのエンゲル係数の推移をみてみましょう。
図表1
出典:家計調査(総務省統計局)をもとにした、総務省統計研究研修所「明治から続く統計指標:エンゲル係数」
日本が貧しかった戦後のエンゲル係数は、60%台と非常に高い数値です。経済成長とともに収入が上昇した1980年代以降、20%台に落ち着いている点から考えれば、収入とエンゲル係数との間に関連性がないとはいえません。
続いて、同資料に掲載されている2017年の年間収入別エンゲル係数をご覧ください。
図表2
出典:家計調査(総務省統計局)をもとにした、総務省統計研究研修所「明治から続く統計指標:エンゲル係数」
2017年時点では、収入とエンゲル係数の数値が反比例しており、ある程度の関連性を確認できます。
では、総務省統計局「家計調査 家計収支編」から算出した、2023年1月の年収別エンゲル係数をみてみましょう。
図表3
※総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯(2023年1月)第2-3表「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」より、筆者作成
2023年1月時点では、200万円未満の低所得層のエンゲル係数は高いものの、それ以上の年収ではほぼ横ばいとなっています。
以上の結果から、現代において「エンゲル係数が高い=低収入」の定説が崩れつつあることは、否定できないでしょう。
収入だけじゃない! エンゲル係数上昇の要因とは?
エンゲル係数は、2005年に下げ止まったあと、再びわずかに上昇を続けているのが現状です。
エンゲル係数の高さが収入の低さと結びつかないとした場合、エンゲル係数を引き上げる要因として、主に以下の三つが考えられます。
・共働き世帯の増加:調理食品やお総菜の購入、外食などにより、食費の占める割合が高くなる
・食生活の変化:健康志向の高まりや質へのこだわりにより、食料費が高くなる
・日本社会の高齢化:一般的に、エンゲル係数が高くなる傾向にある高齢者世帯の増加により、数値が引き上げられる(収入の低下に対して、食料費が減らないため)
・食品の値上がり:食料費高騰に対して、収入が変化しない、あるいは減少することにより、食費の占める割合が高くなる
少子高齢化や、コロナウイルスまん延による健康志向の高まりなど、社会を取り巻くさまざまな事象が、エンゲル係数上昇に影響を与えているといえるでしょう。
【旅行&趣味重視】令和における消費マインドの変化
「エンゲル係数が高い=低収入」の定説が崩れた要因として、消費マインドの変化も挙げられます。
アイランド株式会社が展開する「フーディストサービス」が行った「コロナ禍における料理と生活の変化」をテーマとしたアンケートでは、多くの人が2023年に予算をかけたいものとして「旅行」「趣味」「食事」と回答。さらに、フリー回答からは、心身の健康や旅行・外出の需要が高かったことが明らかになっています。
また、株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が、2016年にビジネスパーソン向けに行った「スキルアップの自己投資金額の調査」では、スキルアップへの投資額が増え「自分磨きエンゲル係数」が上昇しているとも報告されています。
旅行や趣味、自分磨きのための支出が増えた分、削れないとされていた食費などの支出が抑えられることで、食料費の割合と年収の関連性が薄れつつあるとも考えられるでしょう。
エンゲル係数は「貧困指標」から「消費マインドの変化指標」へ
エンゲル係数は、「貧困指標」から、生活の質向上のために重視する、新たな支出項目の増減を示す「消費マインドの変化指標」へと変わりつつあります。
家計を見直す際に、エンゲル係数を参考にする場合は、単に数値のみで食費削減や追加の収入源確保を検討するのではなく、心身の健やかさを保つための支出と食費のバランスに注目しながら、支出計画を練り直してみてはいかがでしょうか?
出典
総務省統計局 統計データFAQ 19A-Q12 エンゲル係数
総務省統計研究研修所 統計リサーチノート No.5「明治から続く統計指標:エンゲル係数」
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯(2023年1月)第2-3表「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」
アイランド株式会社 2022年の生活に関するwebアンケート
株式会社インテリジェンス スキルアップの自己投資金額の調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部