更新日: 2023.03.28 働き方

春は「残業」に要注意! 9月からの「社会保険料」が激増する可能性があるって本当?

春は「残業」に要注意! 9月からの「社会保険料」が激増する可能性があるって本当?
9月に振り込まれた給与を見て、「いつもより少ない」と思った経験はありませんか? 手取りが少なくなった理由の多くは、給与から天引きされる社会保険料が増えているからです。
 
そして、その社会保険料の金額決定には、4、5、6月の給与が影響しています。この3ヶ月間に多くの残業代を稼いでしまうと、9月以降の社会保険料が増えてしまうのです。
 
本記事では、社会保険料が変更される仕組みと、会社員にできる対策について解説します。

執筆者:八木友之()

社会保険料は標準報酬月額で決まる

給与から毎月天引きされている社会保険料ですが、この金額は月収を基準に定められた、「標準報酬月額」という金額をベースに算出されています。例えば、月収31万円の人の標準報酬月額は30万円です。
 
図表1の保険料額表(東京都)の標準報酬月額30万円の行を見ると、介護保険に該当する場合の健康保険料は1万7730円、厚生年金保険料は2万7450円、合計4万5180円となります。
 
図表1

全国健康保険協会 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)
 

標準報酬月額は年1回改定される


標準報酬月額は原則として、「定時決定」によって毎年1回更新される仕組みとなっており、新たな標準報酬月額は9月から翌8月まで適用される仕組みになっています。給与には昇給や手当の発生など変動が生じることから、実際の月収と標準報酬月額に大きな差が生じないようにするためです。
 
定時決定は、会社が7月1日現在で使用している従業員一人ひとりに実際に支給した月収を記載した算定基礎届を提出することによって行われるのですが、ここに記載される月収は4月、5月、6月の3ヶ月分となります。つまり、この3ヶ月間の給与で、9月以降の1年分の社会保険料が決まってしまうのです。
 

支払日で判断

算定基礎届に記載されるのは、4月、5月、6月に「支払われた」月収になります。4月、5月、6月に働いた分ではない点に注意しましょう。例えば、月末締め翌月10日払いの場合には、3月分の労働に対して4月10日に支払われる給与を指しています。
 

標準報酬月額を上げたくない人は残業しないこと

基本給や手当などは、月によって大きく変動する金額ではありません。定時決定において、最も注意しなければならないのは残業代です。図表1を見ると分かるように、標準報酬月額は1万円から3万円程度の幅で細かく設定されています。仮に、1時間当たりの残業代が2000円だとすると、月20時間残業した場合には4万円の残業代が付きます。
 
残業がなければ標準報酬月額が30万円の人であっても、4月、5月、6月の支払対象期間に20時間ずつ残業した場合の標準報酬月額は34万円になってしまうのです。
 
標準報酬月額30万円の社会保険料は前述のとおり4万5180円でしたが、34万円になると5万1204円(健康保険料2万94円+厚生年金保険料3万1110円)となり差額は6024円、年間では7万2288円もの差になります。
 

標準報酬月額アップは損だけではない

健康保険から給付される傷病手当金や出産手当金は、標準報酬月額をベースに計算されます。また、厚生年金保険料を多く支払うということは、将来の年金受給額が増えることになります。社会保険料は、決して捨て金ではないことを知っておいてください。
 

まとめ

社会保険料は毎年4月、5月、6月に支払われる月収を基準にして9月に更新されます。更新後の社会保険料の金額は原則として1年間継続されるため、4月、5月、6月の月収は1年間の社会保険料を決めるカギとなります。
 
残業しないことが月収を下げる手っ取り早い方法ではありますが、標準報酬月額が上がったとしても損するだけではないので、無理して調整しすぎないようにしてください。
 

出典

全国健康保険協会 標準報酬月額・標準賞与額とは?
全国健康保険協会 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
全国健康保険協会 傷病手当金
全国健康保険協会 出産手当金について
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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