更新日: 2023.03.27 働き方
「バックレ」って絶対ダメですか? 社長が怒鳴ったり机を蹴ったりして怖いです…賠償など必要なのでしょうか…?
しかし、本当に逃げ出す(無断で辞める)「バックレ」が、社会人としてよくないことも事実です。こわい職場が嫌になってバックレた場合、会社に賠償などをしなければならないのでしょうか。
まだ受け取っていない給料は、しっかり受け取れるのでしょうか。適切な会社の辞め方も含めて、この記事で順を追って解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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会社のパワハラの違法性について
パワハラ(パワーハラスメント)とは「会社での地位の差、立場の優位性を利用して、地位が下の者にいやがらせをしたり、苦痛を与えたりすること」と定義されています。通称でパワハラ防止法とも呼ばれる労働施策総合推進法によって禁止されていますので、被害者である部下は、上司や会社に対して民事上の損害賠償(民法709条)を請求できるでしょう。
また、パワハラはその態様によって刑法にも違反し、犯罪として処罰すべき可能性もあります。
上司が怒鳴るだけでなく「ぶん殴るぞ」「辞めさせるぞ」などと、部下に不利益を与えることを告知していれば脅迫罪(刑法222条)が、脅して部下に何かをさせよう(何かをさせまい)とすれば強要罪(刑法223条)が、上司が蹴った物が部下の身体に当たる、あるいは近くまで飛んできたときは暴行罪(刑法208条)が、それぞれ成立しえます。
パワハラは違法だが、バックレも違法
パワハラが起きるような会社であれば、今すぐ辞めたくなるのは当たり前の感情で、上司の顔も見たくないのでバックレたくなる気持ちも分かります。しかし、法律上は猶予期間を置かなければならないため、今すぐ辞めることはできません。
例えば、正社員の場合、最低でも2週間前までに「辞めます」と通告しなければなりません(民法627条)。権限のある仕事を任されていた場合は、他の社員に業務の引き継ぎなどもしなければならないので、退職の1ヶ月前までには、あらかじめ通告するのが望ましいとされています。
理論的には、バックレて辞めた人に対して、会社は損害賠償を請求できますが、実際に請求されることは、ほぼないでしょう。従業員が1人バックレたことによる損害を具体的に立証することは難しいからです。
会社は人を雇用する以上、1人ぐらい抜けても問題なく仕事が回るように経営しなければなりません。そのような態勢を整えていなければ、年次有給休暇(有休)や産前産後休業(産休)、育児休業(育休)などを保障できないからです。
また、パワハラが起きてしまう労働環境を放置していた会社側にも責任があるので、損害賠償を請求しても過失相殺によって棄却されることもあります。
どのようにして辞めるのが適切なのか
まずは、もう少し我慢してパワハラの証拠を集めることが重要です。上司に黙って録音した内容でも、民事上(損害賠償請求)の証拠でなら有効となります(脅迫罪などで処罰するための証拠には使えません)。
そして、取得している有給休暇の権利を使い切り、そのままフェイドアウトするのが比較的穏当な方法です。フルタイム勤務の正社員なら、6ヶ月以上勤続し、勤務日の8割以上出勤していれば、少なくとも10日間の有休を取る権利があります。
ある程度の仕事の権限が与えられていて、しかも繁忙期なら、会社は「有休を使うのは今じゃなくて、もう少し後にしてくれ」と指示する権利(時季変更権)があります。よって、権限がない平社員の方が辞めやすいかもしれません。もし、辞めた会社に損害賠償を請求する必要があるなら、弁護士に相談して準備しましょう。
バックレるのでなく、せめて連絡は入れるようにしよう
パワハラが起きる会社なら、今すぐ逃げ出したいのは無理もありません。辞めても、実際に働いた分の未払い給与は受け取ることができます。しかし、バックレという辞め方はよくありません。
法廷で争うとき、裁判官に「どっちもどっち」だと思われて、のぞむ結果が出ないおそれもあるからです。有給休暇の権利を消化するなど、より穏当な方法を間に挟んで辞めるのが望ましいでしょう。せめて辞める前に会社へ電話などで連絡ぐらいは入れたいものです。
出典
厚生労働省雇用環境・均等局 パワーハラスメントの定義について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部