更新日: 2023.03.06 その他家計
データから見る「家族の姿の変化」~私たちは今、家族のあり方をどう捉えているのか?
最近の子育て支援などに関する報道は、異次元の少子化対策の議論がどのように進捗(しんちょく)しているか経過を示すものです。そこで今回からは、こども政策の強化に関する関係府省会議資料のうち、筆者が気になったものをピックアップし、子育てをめぐる議論としてどこにポイントがあるのか探っていきたいと思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
家族の姿の変化
こども政策の強化に関する関係府省会議で参照された資料に、「こども・子育ての現状」として「家族の姿の変化」というデータがあります。
昭和55年(1980年)と平成27年(2015年)、令和2年(2020年)における世帯構成比を表したものですが、図表1の内容が提示されました。
図表1
出典:内閣府 男女共同参画局 「男女共同参画白書 令和4年版 全体版 1 令和3年度男女共同参画社会の形成の状況 特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」
資料では、『世帯種類別の構成割合について、1980年と2020年を比較すると、2020年では「単独世帯」「ひとり親と子供世帯」の構成割合が増加する一方、「夫婦と子供世帯」、「3世代等世帯」の構成割合は低下している』ということがデータとして示されています。
子育てにも影響する家族のあり方
気になる方はじっくりご覧いただければと思いますが、特筆すべきは令和2年(2020年)において「単独世帯」、つまり単身者世帯の割合が38.0%と最も多く、「3世代等世帯」の割合が7.7%と最も少なくなっているという点です。
昭和55年(1980年)では「夫婦と子供世帯」の割合が42.1%と最も多く、次いで「3世代等世帯」の19.9%であったことを考えると、40年を経て家族の姿が様変わりしていることが伺えます。
また、もうひとつのポイントは「3世代等世帯」の割合の変化で、昭和55年(1980年)では全体の19.9%であったのに対し、令和2年(2020年)では7.7%しかないということです。岸田総理大臣が記者会見などで発言しているように、核家族化が進んできたことがこのようなデータからも推察できます。
昨今、子育てが大変だという声が大きくなっているように思います。この点については、例えば職場の労働環境や夫婦間の協力体制、経済的な支援など、いくつかの意味が含まれていますが、前述した世帯構成の変化は、まさに子育てにおける夫婦間、家族間の協力体制に直接かかわってくることといえます。
時を経るにつれて、日本では子どもを大人数で協力して育てていこうという価値観から、限られた人手で育てていく価値観へと変わってきたのかもしれません。家族のあり方が変わると、こうも世帯構成が変化するのかと思わせられるデータといえます。
まとめ
家族をどう構成させるかは人それぞれ、個々人の自由であり、強制されるものではありません。しかしながら、このようなデータを見せられると、果たしてこれでよいのかと一抹の疑問も感じます。
子育てが大変だという声を国はどのように受け止めるのか、そして私たちは、これからの家族の姿をどのように描いていこうとするのか。「家族の姿の変化」というデータは、人が誰とともに、またどんな人生を歩もうとするのかという、価値観の移り変わりを私たちに見せてくれているように思います。
出典
内閣官房 こども家庭庁設立準備室 こども政策の強化に関する関係府省会議の開催について
内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版 全体版 1 令和3年度男女共同参画社会の形成の状況 特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)