更新日: 2023.03.05 ライフプラン
無理のある住宅ローンを組まないために大切なこととは? 令和の時代を見越した「家計八策」-その8-
一、家族で協力する
二、家計を管理する
三、資産形成は末代まで行う
四、保険は最低限にする
五、お金のことを学ぶ
六、老後は介護を想定する
七、教育資金は資産を分ける
八、住宅ローンは無理しない
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
住宅ローンの返済負担が大きくなっている理由
住宅ローンを借りる際、家計の現状に見合わない借り方をしてしまうと、その後、状況が変わった場合、予定どおりに返済することが難しくなる恐れがあります。そのため、住宅ローンを借りる際は将来の家計がどうなるのか、ある程度のシミュレーションを行い、家計に合った形で返済計画を立てていく必要があります。
長年、FP事務所を運営して思うことは、住宅ローンの返済負担が大きいということです。特に子育て世帯で住宅ローンを組まれている場合、返済の負担が重いため、返済以外でかかる他の支出に対しても負担を感じるようになり、例えば子どもの教育費などにお金がかかると感じてしまうケースが少なからずあるように思います。
本来なら、例えば会社員の場合は給料が毎年少しずつ上がり、結婚後、子どもが生まれてマイホームを購入し、その後の家計にも大きな問題がなく、老後に向けて貯蓄もできるといった家計運営が理想的かもしれません。しかしながら、賃金がなかなか上がらない状況では、そのような家計を誰もが実現できる時代ではなくなっている気がします。
だからこそ、人生の4大支出のひとつである住宅ローンの返済について、しっかりと計画立てて考える必要があると考えます。
幸せの所在をどのように捉えるか
どこに住むか、どのような住環境の下で暮らすかなど、大きな枠組みの話はさておき、住宅ローンを組む際は以下のように検討する課題は多くあります。
(1)どの銀行で組むか
(2)金利は何%か
(3)どのような組み方をするか
(4)何年で返済するか
(5)自己資金をいくら準備するか
(6)ボーナス払いを利用するか
(7)月々の返済額をいくらにするか
(8)諸経費はいくらぐらいかかるか
など
このような要素から、住宅ローンを組むことについて難しい話だと思われるかもしれませんが、端的にいうと将来の家計収支を想定し、無理のない返済計画を立てられるかどうかがポイントになります。
返済がおぼつかなくなる例としてよくあるのは、身の丈に合わない、家計の実体と比べて背伸びをしているといった価格の高い物件を購入し、返済計画を立てていながらも月々の返済金額が多いために、家計に余裕が生まれにくくなっているというケースです。
マイホーム購入について何が難しいかというと、家族の希望と家計の実力のバランスをいかに保つかということですが、希望が肥大化しているケースでは無理のある住宅ローンの組み方をしてしまいがちです。
例えばマイホームへの強い憧れや、他人と比べて遜色のない家に住みたいという希望から、家計に見合わない住宅ローンを組んでしまうケースで、気持ちは分かりますが、ここで考えてもらいたいのは幸せとは何かということです。
人によって求める幸せは異なり、まわりの人と比べて見劣りしない家に住むことが幸せであると感じるかもしれません。一方で、家族が健やかで笑いの絶えない家庭が築ければ、それが幸せと思う方もいるでしょう。前者の場合、極端にいえば豊かさを幸せと捉えています。これに対して後者は、家族のあり方に幸せの価値を見いだしています。
マイホームの購入に際して背伸びをせずに住宅ローンを組むということは、まさに後者の幸せの捉え方であり、ここに軸を据えるからこそ、身の丈に合った物件を選び、無理なく返済可能な住宅ローンが組めるように思います。
まとめ
お金のこと、家計のこと、暮らしのことは、往々にして人生観を背景に取り組む必要があることです。深い思考を経ず、例えばマイホームを購入して住宅ローンを組んでしまうと、たとえ返済計画を立てたとしても、家計の状況が少し変化しただけで返済の負担が重いと心理的に感じやすくなります。
今回は住宅ローンをテーマに取り上げているので、お金について説明しているように聞こえるかもしれませんが、人生観や家族のあり方が家計にも大きく影響を与えるということを主題にしたつもりです。“足るを知る”という言葉がありますが、家計八策の「住宅ローンは無理しない」は、この言葉の意味するところに基礎を置いています。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)