更新日: 2023.01.26 働き方
「フリーランス保護新法」とは? これまでとどう変わる? フリーランスの現状とあわせて解説
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
フリーランスの現状
令和2年に内閣官房日本経済再生総合事務局が「フリーランス実態調査結果」を公表しています。この内容によると現在462万人の人がフリーランスの形態で仕事をしているようで、増加傾向にあるようです。
その中でも取引先とトラブルを経験したという人の割合は5割以上もいるようで、一般的な取引業者に比べ立場の弱いフリーランスは、仕事を委託されるときに、契約書などの交付もなく仕事を受けることも珍しくないようです。一方的に業務内容の変更や、報酬に対しても受け取って初めて報酬額が分かるというケースもあるようです。
この調査の中では、取引先とトラブルを経験したことがあると回答したフリーランスのうち、書面や電子メールで仕事の依頼を正式に受けていない割合が29.8%、書面や電子メールで依頼を受けているが、取引条件の明記が不十分であると回答した割合が33.3%と、合わせて63.1%となり、取引条件が十分に明記されていなかった割合は6割以上を占めています。
フリーランス保護新法によってどう変わる
では、今回のフリーランス保護新法が施行された場合は、今後のフリーランスはどうなっていくのでしょうか。大きな方向性の定義は、以下のとおりです。
●フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安定的に働くことができる環境を整備する。
●このため、他人を使用する事業者が、フリーランスに業務を委託する際の遵守事項を定める。
具体的な遵守事項の内容は、フリーランスに業務委託を行う事業は書面や電子メールによって、業務委託の内容や報酬額を記載しなければいけなくなりました。
また一定期間以上の期間に継続的に業務委託を行う場合には、上記以外に業務委託に係る契約の期間や契約終了の事由、契約の中途解除の際の費用などを記載することが必要となりました。
契約期間の途中での解除や更新時の更新をしないときには、中途解除の日または期間満了日の30日前までに予告をしなくてはなりません。フリーランスから求めがあった場合には、事業者は、契約の終了理由を明らかにしなければなりません。
また募集時にも義務を課せられることになりました。
不特定多数の者に対して業務受託をするフリーランスの募集に関する情報などを提供する場合には、その情報などを正確・最新の内容に保ち、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならず、業務委託の内容や報酬額の明示が必要で、明示した業務委託の内容と異なる内容の業務を委託する際には、説明義務が生じます。
フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為
前項のように、今までは口頭で業務委託を行っていたケースも多くあり、委託時に関する明示が必要となってきました。さらに事業者に対して禁止された行為もあります。
(1)フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領の拒否をすること
(2)フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬の減額をすること
(3)フリーランスの責めに帰すべく理由なく返品を行うこと
(4)通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
(5)正当な理由なく自己の指定する物の購入、または役務の利用を強制すること
(6)自己のために金銭、役務やその他の経済上の利益を提供させること
(7)フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させる、またはやり直させること
上記のように、事業者の一方的な理由で、フリーランスの立場が不利にならないように禁止行為が定められました。
その他、就業環境の整備として、ハラスメントの対策を講じることや、出産・育児・介護と業務の両立に対しても配慮することなども取り入れられています。
事業者が違反した場合には、助言や指導、命令を行うなど、必要な範囲で履行確保措置が設けられました。
今後は不正行為が起こらないように、フリーランスから、その事実を国の行政機関に申告することができるようになり、申告したことによって業務委託の解除や、その他の不利益な取り扱いを事業者は行ってはならないとされています。
国は今後、フリーランスの環境整備のための相談窓口も設けるとされています。
まとめ
これまで立場の弱いフリーランスに対して、安心して業務ができるように「フリーランス保護新法」が制定される予定です。
契約書などを交わして業務委託を受けているケースは多いと思いますが、中には口頭で依頼を受けて業務を行っているケースもあり、報酬額が曖昧だったり、業務も事業者都合で変えられたりといったケースもあるようです。
この保護新法が施行されれば、報酬額や業務内容も明示され、フリーランス側が少しでも安心して業務受託できるようになることを願います。
出典
e-Govパブリック・コメント フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性
内閣官房日本経済再生総合事務局 令和2年5月 フリーランス実態調査結果
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー