更新日: 2023.01.08 働き方

【2023年4月改正】中小企業でも月60時間を超える残業は「残業割増率50%以上」になります!

【2023年4月改正】中小企業でも月60時間を超える残業は「残業割増率50%以上」になります!
2023年の4月から、中小企業における残業代の割増率が引き上げられることになります。これについて、知らないという方も意外といらっしゃるのではないでしょうか。そこで、この記事では、中小企業における残業代の割増率引き上げについて解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

現行制度と2023年4月からの残業代の違い

現行の労働基準法では、週40時間、1日8時間を超える部分の労働は残業(法定時間外労働)扱いとなり、通常よりも25%以上割り増しした賃金が支払われます。月60時間を超える部分にはさらに25%が上乗せされ、割増率は50%以上になります。
 
例えば、時給1000円の方が残業した場合、1時間当たりの残業代は1250円以上となります。そして、月61時間以上の残業をした場合、60時間を超える部分における1時間当たりの残業代は1500円以上となるというわけです。
 
ただし、中小企業においては、2023年3月31日まで月60時間を超える部分の割増率の適用が免除されています。2023年4月1日からはこの適用の猶予がなくなります。
 
つまり、中小企業において、現行の制度では残業代の割増率は一律25%以上だったものが、2023年4月1日からは60時間を超える部分については50%以上となるわけです。このように2023年4月1日から残業代の計算方法が変わることは、労使ともに知っておかなければなりません。
 

月60時間を超える労働と、深夜労働・法定休日労働との関係にも注意

22時から翌5時までの労働は、残業とは別に深夜労働として、25%以上上乗せした賃金を支払う必要があります。これは通常の残業代の割増率と重複して適用されるため、月60時間を超える残業に深夜労働が含まれている場合、75%以上割り増しされた賃金が支払われることになります。
 
また、休日労働を行う場合は、法定外休日と法定休日についても確認しておかなければなりません。
 
法定外休日とは、会社が定めた独自の休みです(例えば土曜日など)。法定休日とは、法律で定められる週1日以上与えなければならない休みのことです(例えば日曜日など)。月60時間を超える労働の割増率の適用について、法定外休日は対象となり、法定休日は対象外となります。
 
法定外休日と法定休日がいつになっているのかは雇用契約の内容によって異なるため、この点はよく確認しておきましょう。
 

残業代の代替として有給の付与も認められる

労働者の健康確保の観点から、月60時間を超える労働については、割増賃金の支給に代えて有給休暇(代替休暇)の付与でもよいとされています。ただし、通常の割り増し部分である25%は通常どおり金銭で支給する必要があります。
 
例えば月80時間の残業をした場合、月60時間を超える部分から月80時間までの部分に適用される50%の割増賃金のうち、25%分は残業代の支給に代えて有給休暇を付与できるということです。
 
図表1
 

 
出典:厚生労働省 月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません
 
ただし、この代替休暇制度を適用するためには、過半数の労働組合や労働者の代表者と労使協定を結ぶことが必要です。なお、労使協定があったとしても、休暇の取得とするか残業代を受け取るかは労働者個人の自由に委ねられています。
 

残業代の割増率について労使ともに正しい理解を

2023年4月から、中小企業において月60時間を超える残業代の計算方法が変わります。労使ともに残業代について正しく理解ができていなければ、トラブルの原因となることもあり得るでしょう。これを機に、労使どちらも現在の残業代の計算方法と2023年4月からの残業代の計算方法について、改めて確認しておくことをおすすめいたします。
 

出典

厚生労働省 月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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