更新日: 2022.12.21 働き方

会社から「有休は年末年始に使ってね」と言われました…冬休みに有休をとらなければいけないのは違法ですか?

会社から「有休は年末年始に使ってね」と言われました…冬休みに有休をとらなければいけないのは違法ですか?
会社が、有給休暇を年末年始の冬休みで消化するように指示することは違法ではないのでしょうか。このような問題は、2019年4月の労働基準法の改正による5日間の有給休暇取得義務化に対応するのが難しい企業で起こりがちです。
 
このような企業では、5日間の有休取得義務を果たすために、従来から休みであった冬季や夏季のまとまった休業日に有休を割り当てようとします。本記事ではこのような対応が労働基準法に違反しないのか説明していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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年次有給休暇の義務化とは

2019年4月の労働基準法改正により、有給休暇の取得義務化が定められました。具体的には、年間10日以上の有給休暇が与えられた労働者に対しては、年次休暇を付与した日から1年以内に、5日間以上の有給休暇を取得させなくてはならないと定められたのです。
 
これを守ることができなければ、労働基準法の第39条7に反することになり、同法の第120条により労働者1人あたり30万円以下の罰金が科せられます。該当する労働者の数が多ければかなり大きな会社の負担となりますので、会社にとっては重要な問題です。
 
ただ、業務が多忙であったり、労働者の数が不足気味であったりする会社にとって、対象となるすべての労働者に5日間の有休を取得させるのは容易ではないことも考えられます。そこで、会社によっては、従来休みであった年末年始などの長期休暇に有給休暇を割り当てる方法を採ろうとする場合もあり得るでしょう。
 
有給休暇の取得義務を果たしつつ、業務にも支障を生じさせないという会社にとって好都合な方法に思えますが、これは法律上問題ないのでしょうか。
 

労働条件の不利益変更

年末年始を休暇にしている会社は多くありますが、本来、年末年始を必ず休暇にしなければならないわけではありません。労働基準法では、1週間に1日、または4週間に4日以上の休日を設けることが定められているだけであり、日曜日や祝日、お盆や年末年始などでも労働日と定めることができます。
 
ただ、多くの会社においては、就業規則で休日について定めており、年末年始休暇も就業規則で規定されていることがほとんどです。つまり、労使の間では年末年始が休みであることは合意となっています。
 
一方で有給休暇というのは、労働日であるにもかかわらず労働者の権利として休むことができる日のことをいいます。したがって、有給休暇は休みの日ではなく、労働日に取得すべきものです。もともと休日と定められている年末年始に有給休暇を取得させることはできません。年末年始に有給休暇を取得させたいのであれば、まず前提として年末年始を休暇ではなく労働日にしなければならないのです。
 
しかし、従来休みであった年末年始を労働日に変えることは、労働条件の不利益変更となり、会社側が一方的に変更することは許されません。したがって、単純に年末年始休暇として有休を消化させることは違法といえます。
 

従来の休暇で有休消化させるのは違法である

従来休暇として定められていた年末年始などの期間に、有給休暇を取らせることで有休消化させようとする会社の行為は、労働条件の不利益変更として違法となります。
 
そもそも、2019年4月の労働基準法改正は、有休取得率の低さを改善する「働き方改革」の考え方の下で行われているものですから、会社は労働者の有休取得を妨げるのではなく、有休取得を促進する方向に動くべきものです。労働者も会社が違法な要求をしてこないか、常に意識しておくことが求められるでしょう。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法

厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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