更新日: 2022.12.19 働き方
給与明細に書いていない「実質賃金」の計算方法と「賃金の種類」を解説
では、実質賃金とは何なのでしょうか? 本記事では、実質賃金の概要と自分で算出するための計算式などについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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そもそも賃金とは何か? 概要と法律による定義を解説
賃金に関しては、労働基準法によって以下のように定義されています。また、賃金の要である最低賃金と割増賃金についても知っておくことが大切です。
・賃金の定義
労働基準法24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とした上で、「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い」も可能としています。
また、同条2項で「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と明記されている点にも留意が必要です。
・最低賃金
労働者の賃金は最低賃金法に基づいて国が最低限度額を定めています。そのため、雇用主は最低賃金以上の賃金の支払いが必要です。なお、労働者と最低賃金以下の賃金で合意しても法律的には無効となります。
・割増賃金
労働基準法における法定労働時間は、1日8時間、1週40時間です。ただし、要件を満たした雇用主には原則、1ヶ月45時間、1年360時間までの時間外労働(残業)が認められています。時間外労働を行った労働者に支払われるのが割増賃金(残業代)です。割増賃金は、通常の賃金の2割5分以上と決められています。そのため、時給1000円の労働者の時間外労働には1250円以上の割増賃金が必要です。
名目賃金とはどう違う?実質賃金の概要と算出法を解説
実際に受け取っている賃金のことを名目賃金と呼びます。名目賃金はあくまで勤め先による評価でしかなく、社会状況における自分の賃金の高低を知ることはできません。また、国が公表する「実質賃金指数」も同様です。社会状況と自分の賃金の関係性を知るためには、個人的に実質賃金を計算する必要があります。
・実質賃金指数とは何か
実質賃金指数とは、名目賃金で購入可能な物やサービスの量を表した数値のことです。実質賃金指数は、名目賃金を消費者物価指数に基づく物価変動で割って算出されています。
なお、実質賃金指数は厚生労働省が「毎月勤労統計調査」内で公表していて、令和4年9月の確報値は前年同月比1.2%減の83.7%(令和2年の平均を100とした場合)です。令和4年10月の消費者物価指数(総合指数)は3.7%の上昇のため、物価高に賃金が追いついていない状況が理解できます。
・自分の実質賃金を算出する方法
実質賃金指数は、あくまで国による調査の結果です。国全体の賃金状況を知る目安にはなりますが、各労働者の状況を知ることはできません。そのため、自分の実質賃金を知るには個人的に算出する必要があります。
その計算式は「名目賃金÷物価上昇率」です。給与明細に記載されている名目賃金を「消費者物価指数」で割ることによって、簡単に自分の実質賃金を算出できます。
自分の実質賃金に関心があるなら計算してみよう
賃金には大きく分けて名目賃金と実質賃金があります。名目賃金は明細書に記載されている実際に受け取る金額のことです。一方の実質賃金は、名目賃金を総務省の消費者物価指数に基づく物価の変動で割って算出する指数のことで、厚生労働省が「毎月勤労統計調査」内で公表しています。
ただし、当調査は国レベルの指数のため、自分の実質賃金を知りたい場合は個人的に計算が必要です。「名目賃金÷物価上昇率」という簡単な算式で算出できるため、関心がある人は計算してみましょう。
出典
厚生労働省 毎月勤労統計調査
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)10月分(2022年11月18日公表)
e-Gov法令検索 労働基準法
e-Gov法令検索 雇用保険法
厚生労働省 最低賃金制度とは
厚生労働省 法定労働時間と割増賃金について教えてください。
一般財団法人とうほう地域総合研究所 経済用語・データのいみ
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部