更新日: 2022.11.16 働き方
パートの「社会保険適用拡大」逆に何時間勤務したら、扶養内のときより手取りは増える?
本記事では、今回拡大された社会保険の加入条件について、また、どれくらい働いたら扶養内のときより手取りが増えるのかについても解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
社会保険が適用される事業所と労働者の要件
2022年10月から変更となったのは、「特定適用事業所」の要件と「短時間労働者」の適用要件です。特定適用事業所の要件は、以下のとおりです。
●従業員数(※)101人以上の企業
(※従業員数とは、厚生年金保険の適用対象者数)
短時間労働者の適用要件は、以下のとおりです。
●週の所定労働時間が20時間以上
●月額賃金が8万8000円以上
●2ヶ月を超える雇用の見込みがある
●学生ではない
上記の要件を全て満たす方は、社会保険に加入しなければなりません。年収の基準でいえば約106万円(≒8万8000円×12ヶ月)です。いわゆる「106万円の壁」です。これまで扶養に入るために130万円弱(いわゆる「130万円の壁」)に抑えていた方も、会社が「特定適用事業所」となる場合、社会保険に加入することになります。
扶養内のときより手取り収入を増やすには
扶養から外れて(社会保険に加入して)働いた場合、その手取り収入は、扶養内で働いたときと比べて少なくなることがあります。これは、社会保険料、所得税、住民税が差し引かれるためです。例えば、年収を105万円に抑えて働いた場合と、106万円で働いた場合では、105万円に抑えていたときの方が、手取り収入は多くなるということです。
ということは、どうせ扶養から外れるなら、年収を抑えない方が良いのではないか、と考えてもおかしくはありません。逆に、どれくらい働いたら、扶養内のときより手取り収入が増えるのかが気になってきます。以下で、その点について簡単に計算してみます。
例えば、手取り収入で106万円を超えるには、年収でいくら稼いだら良いかについて計算してみます。手取り収入は、以下の計算式によって算出されます。
手取り収入(可処分所得)=収入-(社会保険料+所得税+住民税)
社会保険料、所得税、住民税は、収入によって金額は異なりますが、収入に対しておおよそ20%前後です。計算を単純にするために、ここでは20%と仮定します。すると、先ほどの式が、以下のように変わります。
手取り収入=収入-収入×20%
=収入×(1-20%)
=収入×80%
手取り収入が106万円を超える場合、先ほどの式を、以下のように変えます。
106万円 < 収入×80%
この式を解くと、収入は132万5000円超となります。
今回は社会保険料、所得税、住民税の合計額を、収入の20%と仮定して計算をしました。現実に即した金額としては、収入が130万円くらいで、手取り収入は106万円を超えるのではないかと思います。
まとめ
2022年10月より、パート・アルバイトの社会保険適用要件が拡大しました。これにより、これまで扶養内で働いてきた方も、今後は扶養から外れて社会保険に加入するのか、労働時間(収入)を抑えてこれまでどおり扶養内で働いていくのか、選択しなければなりません。
そのときに考えなければならないのが、社会保険に加入するのかどうか、収入を抑えるべきかどうかでしょう。扶養内でいるということは、収入を抑えなければなりません。その場合、家計にどのような影響があるのかも考慮する必要があります。
社会保険に加入するのであれば、扶養内のときよりも手取り収入を増やしたいことでしょう。その場合、どれだけの収入があれば、扶養内のときより手取り収入が増えるのかも試算しました。本記事を参考に、ご自身に合った働き方を見つけていただければ幸いです。
出典
日本年金機構 適用事業所と被保険者
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
日本年金機構 厚生労働省から法律改正のお知らせ
厚生労働省 「社会保険適用拡大ガイドブック」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー