更新日: 2022.09.15 働き方
労働が「見える化」しにくいテレワークの人にも残業は適用される?
テレワークには、自宅で子育てや介護をしながら仕事ができるという魅力があります。さらに、災害時などの事業継続計画(BCP)対策として、事業主にとってもメリットがあります。
しかし、テレワークには労働基準法が適用されるのかなどの疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。ここでは、テレワークの基本的な考え方から残業をはじめとする労務管理について解説します。
執筆者:田中美有()
テレワークとは?
「テレワーク」には、事業主と雇用契約がある場合のみ労働基準法が適用されます。事業主と業務委託契約や請負契約を結んでいる場合は適用されません。
テレワークの種類
テレワークには次の3種類があります。
●自宅でのテレワーク・・・在宅で勤務
●サテライトオフィス勤務・・・所属企業のメインオフィス以外の近隣の小規模オフィスで勤務
●モバイルワーク・・・外勤中にモバイルツールでオフィスとやり取りして勤務
ここでは、最も関心があると思われる「自宅でのテレワーク」を取り上げます。
「自宅でのテレワーク」を行う前の注意点
自宅でのテレワークを行う前に、就業規則にテレワーク勤務に関する以下の規定があることを確認します。
●在宅勤務用の労働時間に関する規定
●人事異動として在宅勤務を命じる規定
●通信費などの経費支払いに関する規定
自宅でテレワークを行う旨を明示した労働条件通知書を書面で確認します。
テレワークに残業は適用されるのか
就業規則に労働時間に関する規定があれば、自宅でのテレワークにも労働基準法の通常の労働時間制(1日8時間、週40時間)が適用されます。
使用者は労働時間を適正に把握することが求められています。そのため、所定労働時間を超えた場合は残業手当や深夜・休日手当も支払われます。
しかし、労働の実態を管理することが困難な場合もあるため、自宅でテレワークを行う労働者は労使協定締結により図表1のような労働形態も認められています。
図表1
労働形態 | 労働時間の考え方 | 残業の考え方 |
---|---|---|
変形労働時間制 | 一定期間の平均労働時間が 1週間の法定労働時間内であれば、特定日に法定労働時間を超えての労働が可能となる制度 | 残業は発生しない制度であるが法労働時間超過分は支払われる |
フレックスタイム制 | 一定期間の平均労働時間が 1週間の法定労働時間内であれば始業・就業時刻を労働者が決定できる制度 | 残業は発生しない制度であるが法定労働時間超過分は支払われる |
裁量労働制 | 業務の性質上、労働時間は労働者の裁量で決定される制度 | 残業の概念なし (ただし深夜勤務と休日勤務手当支給はあり) |
事業場外みなし労働時間制 | 以下の要件を満たせば所定労働時間を勤務したとみなす制度 ・自宅で業務 ・パソコンが使用者の指示で常時通信可能ではない ・作業について使用者の具体的な指示がない |
・法定労働時間超過分は支払われる ・深夜勤務・休日勤務を行う際には事前申告し使用者の許可が必要(使用者の指示なく、労働者の独断での労働は法定労働時間とみなされない可能性あり) |
出典 厚生労働省 「自宅でテレワーク」という働き方 より筆者作成
自宅でテレワークを行う場合には、使用者が労働の実態を把握することに限界があるため労働者に労働条件の決定が認められています。
まとめ
今回は、自宅でのテレワークは残業が適用されるかを解説してきました。結論は、テレワークも労働基準法が適用される働き方なので、労使協定によって残業は認められます。テレワークは使用者にとってもメリットがある制度なので、労働者の裁量に委ねている点も多くあるといえそうです。
しかし、所定労働時間と残業との仕切りが難しいことも事実ですので、不当な長時間労働を課せされないように労働規約や労使協定を正確に把握することが大切です。
出典
厚生労働省「自宅でテレワーク」という働き方
厚生労働省 テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン
執筆者:羽田直樹
二級ファイナンシャルプランニング技能士