更新日: 2022.09.11 働き方
年俸制でも残業代は支払われる? 支払われないケースや請求する際の注意点
原則として、年俸制でも残業代は支払われます。しかし、注意しなければならない点もあります。本記事では、残業代が支払われないケースや残業代を請求する際の注意点について解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
支払われないケース
残業代が支払われないケースは、以下のとおりです。
●管理職の地位にある場合
●固定残業代制を採用している場合
●裁量労働制を採用している場合
管理職の地位にある場合
会社は、管理職(管理監督者)の地位にある者に対して、時間外手当や休日手当を支払う義務がありません。ただし、ここでいう管理職は「労働条件の決定その他の労働管理について経営者と一体的な立場にある者」であり、役職名で判断されるわけではありません。職務内容、責任・権限、勤務態様などの実態によって判断されます。
固定残業代制を採用している場合
固定残業代制は、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対して、割増賃金を定額で支払う制度です。一定時間分については、時間外労働などの有無に関わらず、割増賃金が支払われます。
例えば、雇用契約上、月5時間分の時間外労働に対する割増賃金が年俸の中に含まれている場合には、月5時間分までは残業代が支払われません。ただし、それを超える場合には追加で残業代が支払われます。
裁量労働制を採用している場合
裁量労働制は、対象となる業務に対し、労使であらかじめ定めた時間分を労働時間と見なす制度です。例えば、その業務に対する労働時間を7時間と定めた場合、実際に働いた時間が5時間であっても10時間であっても、労働時間は7時間と見なします。
裁量労働制には、「時間外労働」という考え方が無いため、残業代は支払われません。このため、裁量労働制を導入する際には、従業員(労働者)に不利な条件とならないよう、労使協定を締結する必要があります。
請求する際の注意点
残業代を請求する際には、以下の点で注意が必要です。
●残業を証明する証拠が必要
●賃金請求権は時効により消滅する
残業を証明する証拠が必要
残業代を請求する際、根拠となる書類などが必要です。具体的には、以下のような物をそろえておくとよいでしょう。
●雇用契約書・労働条件通知書
●就業規則・賃金規定
●給与明細・賃金台帳
●タイムカード・出勤簿
上記以外でも、残業を行ったことを立証できる物があれば、保管しておくことが望ましいといえます。
賃金請求権は時効により消滅する
残業代を請求する権利(賃金請求権)は、時効によって消滅します。2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金請求権については、3年経過すると時効により消滅します(それ以前のものについては2年で消滅します)。
ですから、未払いの残業代がある場合は、気付いた時点で請求することが望ましいでしょう。
まとめ
年俸制であっても、残業代は支払われます。「年俸制だから残業代が支払われない」「年俸制なら残業代を支払わなくても良い」というのは間違いです。
残業代が支払われないケースもあります。以下のような場合です。
●管理職の地位にある場合
●固定残業代制を採用している場合
●裁量労働制を採用している場合
残業代を請求する際に注意すべき点があります。
●残業を証明する証拠が必要
●賃金請求権は時効により消滅する
残業代を請求できるかどうかは、これらのことを総合的に判断しなければなりません。もし、あなたが残業代の請求についてお困りのようでしたら、独りで解決しようとはせず、弁護士などの専門家に力を借りることも検討してみてはいかがでしょうか。
出典
東京労働局 「しっかりマスター 労働基準法」
e-Gov法令検索 「労働基準法」
厚生労働省 「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
厚生労働省 「固定残業代を賃金に含める場合は」
厚生労働省 「専門業務型裁量労働制」
厚生労働省 「企画業務型裁量労働制」
厚生労働省 「労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)について」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー